第26回 てきすとぽい杯
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地球百個分の殺意とラブレター。
投稿時刻 : 2015.04.11 23:44 最終更新 : 2015.04.11 23:47
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- 2015/04/11 23:47:07
- 2015/04/11 23:45:46
- 2015/04/11 23:44:48
地球百個分の殺意とラブレター。
木下季花


 地球百個分の感情で君を殺すよ、と彼は言た。
 地球百個分の殺意が凄いのかどうかは分からなかたけれど、それくらいの巨大な感情が私に向けられているのだと思えば、それが悪意にしろ殺意にしろ善意であるにしろ、私がその人の心の中にいられるのだと思て安心できる。彼の心の中で、私は地球百個分の殺意となて生きていられるのだから。それくらいの存在感があれば素敵だ。私はビクバンのように大きく膨れている。たくさんの殺せという言葉で溢れている世間の中で、私は地球百個分の殺意を向けられている。彼は自分でも手におえないほど大きく膨れる怒りを、私に向けている。何故なら私彼を傷つけてしまたからだ。彼が怒るのも当然だろう。私は彼に平然と嘘を吐きながら浮気をしてしまた。彼の幼馴染と何度も寝た。彼が仕事に行ている時の彼の幼馴染を呼んでこの部屋で馬鹿みたいに愛し合てしまた。そのせいで私は地球百個分の殺意を向けられている。今、首にナイフを当てられている。素敵だね。私を殺せよ。男を誘惑して、その男に寄生することでしか生きられない屑みたいな私を殺せよ。君は地球に宿る害虫を殺した神になれるよ。地球百個分の殺意で、信じていた女を殺して英雄になれよ。だけど君はそんなことできないだろうね。君は優しい家庭で優しく育てられた温室野菜なのだ。馬鹿みたいに臆病で優しい心を持て育てしまた。だから私を殺すことはできないだろう。その地球百個分に膨らんだ感情は、すぐに呆気なく消滅するだろう。君の心の中でビクバンを起こして生まれた感情は、呆気なく四散して宇宙の塵となるのだろうね。だから私たちはまた明日から同じように暮らすのさ。私がご飯を作りながら食卓で君の帰りを待て、仕事から帰て来た君を出迎える。そうして一緒にご飯を食べながら、バラエテ番組を見て簡単に笑てしまう私。を君は幸せそうに眺めるんだ。私が浮気した事なんて簡単に忘れて、無かたことみたいにして、地球百個分の殺意があた事さえも忘却の彼方に捨て去るのだろう。でも君が地球百個分の殺意を抱えて、こうやて水の中のように冷たいナイフを私の首筋に突き付けたことを一生忘れないでほしい。きみが自分を襲う理不尽に対抗できるのだということを、自分を襲う不幸に対して地球百個分の感情と共にナイフを突きつけられる男なのだということを、どうか忘れないでほしい。この不確かな世界に生きるあなたは、これから私たちが起こす様々な理不尽に襲われて、混乱して泣いてしまうのだろうけれど、その度に反抗して、自分を襲う理不尽から決して目を逸らさないでほしい。あなたが男として生まれて、地球百個分もの殺意を誰かに向けられるのだということを、与えられるのだということを。いつしかそれが裏返て地球百個分の愛情を誰かに向けられるのだということを、君は知ていてほしい。覚えていてほしい。その優しさがいつかきと、こんな私みたいな馬鹿で駄目な目な女じなくて、あなたにふさわしい綺麗で優しい、浮気をしないような一途な女性に向けられるんだてことを、私は願うし、あなたが大きな感情を抱えられる人なのだということを、私は決して忘れないから。そして多分あなたも忘れないだろうね。お互いにこのシーンを決して忘れない。突きつけられたナイフの冷たさも、あなたの怒り狂たような目も、DVも犯してしまいそうな感情の爆発も、そんなあなたに抱える私の愛情も、きと長くは続かないだろうけれど、それでも私はあなたに捨てられるまでは、あなたのことを愛しているよ。地球百個分、あなたのことを宇宙の彼方に捨てられたとしても愛します。愛しています。
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