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第28回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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夜明け
 投稿時刻 : 2015.08.16 07:46
 字数 : 1000
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夜明け
小伏史央


 埃が落ちてくる。照明は点かない。絆創膏。転がたコーラの空き缶。閉めきた窓。錆び付いた鍵。台所でコバエが飛んでいる。炊飯器の中身は腐ている。一杯になた郵便受け。定期購読していないはずの新聞紙。冷蔵庫の稼働音が部屋を充たす。テペーパーの空き箱。黄ばんだタオル。ツナ缶。シプペンシル。レモン味の飴が布団にこびりついている。マグカプに冷めたコーヒーが入ている。積み重なたゴミ袋が落ちてくる。蛍光灯は外されている。蚊取り線香。中身の飛び出た歯磨き粉。不透明の窓ガラスに月光は映らない。くしくしになたカレンダー。つぶれたペトボトル。断線したカナル型イヤホン。水道代の請求書。水を張た流し台。割れた鏡。ところてん。扇風機の前面ガードが外れている。布団にコーヒーのシミができている。スニーカーの紐が濡れている。植木鉢の花は枯れている。穴の空いた紙袋。散乱した髪の毛。預金通帳。フライ返し。電池切れの腕時計。動かないコンピタ。ガムテープの芯。枕カバーのフスナーが開いている。細長い箱から食品用ラプが転がり出ている。コンセントに繋がていないたこ足回線。鏡に写た人間は割れている。開けたままの旅行カバン。まな板にカビが生えている。脱ぎぱなしの服。油の染み着いたフライパン。歪んだハンガー。黒ずんだキベツ。換気扇は回らない。硬貨が散らばている。チラシが無造作に放り込まれている。流れ星が落ちてくる。月が照らす。まぶたの裏は丘の上。レジシートがどこまでも広がている。ひとりだけの空間。腕時計の針が動き出す。イヤホンから川のせせらぎが流れる。川辺で綺麗な花が咲いている。草が根を伸ばす。草花も眠りにつく。静寂が夜を充たす。居心地の良い暗闇に包まれる。優しい風が体を撫でる。風に乗たチラシが体に当たる。布団には黒いシミができている。夜が明ける。腕時計が止まる。大量の新聞紙。紙面に載た人間は割れている。冷蔵庫の中身は腐ている。レジシートが太陽の光に焼ける。徐々に狭くなていく。使い終わた蚊取り線香がぼろぼろと崩れる。コバエが部屋中を飛んでいる。空が落ちてくる。暗闇が掻き混ぜられる。眩しい光に充たされていく。捻じれた脚。捻じれた腕。捻じれた胴体。体中が悲鳴を上げる。誰かが嘲笑している。誰かが蔑んでいる。立ち上がると頭を突き刺した。それは幾重もの矢の中傷。
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