てきすとぽい
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第29回 てきすとぽい杯
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ある男の死
(
三和すい
)
投稿時刻 : 2015.10.17 23:10
字数 : 493
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ある男の死
三和すい
「
……
誰がク
ッ
クロビンを殺したの?」
思わず呟いた言葉に、後輩が「何ですか、それ?」と聞いてきた。
「確かマザー
グー
スの一節だ。昔読んだ推理小説に、そんな言葉が出てきたのをふと思い出してな」
答えて俺は大きくため息をつきながら、路地裏に横たわ
っ
た男の死体を見つめた。
「い
っ
たい誰が殺したんだろうな
ぁ
」
男の本当の名前は知らない。けれど、こいつがこの辺りでは「ヒツジ」と呼ばれていることは知
っ
ていた。いつも羊の毛皮のような白いモコモコのコー
トを着ていたからだ。
そのコー
トこそが、今回の事件の凶器だ
っ
た。
しかも、驚くべきことに、コー
トの羊毛を寄り合わせて作
っ
た太い毛糸で首を絞められていたのだ。
「犯人はい
っ
たい何を考えていたんだろうな
ぁ
」
毛糸を作り出すためにコー
トの丈は半分ほどにな
っ
ており、ヒツジの生足があらわにな
っ
ている。それを隠すように、俺はビニー
ルシー
トをかけてや
っ
た。
親しい相手ではない。話したのは数えるほどだ。
それでも、知
っ
た相手の死は辛い。殺されたともなれば尚更だ。
せめて死に水の代わりに好きだ
っ
た酒でも飲ませてやりたいところだが、鑑識が終わ
っ
ていない状態では、それも無理な話だ
っ
た。
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