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第31回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動4周年記念〉
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こんにちは
 投稿時刻 : 2016.02.20 23:45
 字数 : 941
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こんにちは
永坂暖日


 1969年にアームストロングとオルドリンが初めて月面を歩いてからおよそ300年、人類活動の最前線は冥王星に到達していた。月や火星、土星の衛星タイタンにもにいくつもの都市が建設され、そこで生まれ人生を閉じる人々が当たり前に存在する。僕のおじいさんの兄弟は月面都市に移住して人生を終え、その孫――ぼくのはとこに当たる人の中には、タイタンに行た人もいるらしい。
 太陽系規模で親戚が拡散しているのは珍しくない。だけど、月よりも遥かに遠く、星の一部にしか見えない場所に親戚がいるのだよ、と言われても、地球を出るどころか飛行機にすら乗たことのないぼくにはぴんと来ない話だた。
 それは、別に親戚に限た話ではなく、冥王星にまで行た人類に関してもそうである。彼らは地球ではなくタイタンで生まれ育た人達だ。同じ人類がとうとう冥王星をその目で直接見たのです! とニスで大々的にやていたけれど、生まれた星さえ違う彼らと、地球で生まれたぼくは本当に同じ人類なのだろうか、と思う。地球から遠い場所で生まれた人ほど、その環境に適応するため遺伝子改造をしているそうだ。地球で育たぼくは、今のところまだ遺伝子改造はしていない天然物の人類てやつだ。
 そんな人間は地球上ですら珍しい存在になりつつある。おかげでぼくは、生まれたときから厳重に「保護」されている。
 地球上からほとんど失われた自然環境を人工的に再現した巨大なドームがぼくの世界のすべてだた。降り注ぐ太陽光は肌に有害にならないように調節され、汚染などなかた時代の大気が再現されている。外界の虫一匹すら入り込めるような穴もない。出入り口は厳重に管理され、政府に許可された者だけが出入りできる。
「あなたが本当に本物の地球人なのね?」
 それなのに、彼女はある日突然、僕の前に現れた。ドームに出入りできる許可証もなく、身分証となる生体チプも持ていない不思議な少女。
「ボイジに載せられた記録を頼りに、あなたたちと同じ姿にしてみたんだけれど、よく似ているみたい。良かた」
 呆気にとられる僕の前で彼女はにこり笑い、くるりと回てみせる。それから、ああ、思い出した、と言て僕の顔をのぞき込んだ。
「『こんにちは』。この土地、それが挨拶の言葉なのよね?」
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