てきすとぽい
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第32回 てきすとぽい杯
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na8g
(
住谷 ねこ
)
投稿時刻 : 2016.04.16 23:45
字数 : 1150
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na8g
住谷 ねこ
この年にな
っ
て
こんな年なのに
どうしてだか
……
恋に落ちた。
仕事先やら、ネ
ッ
トやらで
不倫の話はたくさん聞いた。
どれも自分には関係なく
中学生よりも可愛くな
っ
てしまう
40過ぎの女たちを半ば飽きれて見ていた。
みんなくたびれた旦那にあきあきして
手を離れた子供のいた時間を持て余して
仕事をしてみたり、趣味に走
っ
てみたり
それでも埋められない何かを男に求めたんだろうか。
男も同じなんだろうか。
それでもそんなに都合よく相手が見つかるものなんだろうか。
相手の男たちはそれなりにか
っ
こよくなければならないし
自分だ
っ
てそれなりに女でいなければならないし
家庭から離れてもう一度、云々という気持ちがなければならない。
そんな都合のいい二人が出会う確率はどれくらいなのか
出合
っ
たからとい
っ
て本当にそんな関係になる確率はどれくらいなのか
さらに、その相手しか見えなくな
っ
て
我慢できなくな
っ
て
なにもかも、本当になにもかも捨てて
50年近い人生をかけて作
っ
てきた自分の世界のすべてを捨てて
それでもいいと、この先、この相手とともに過ごすのだと
思うにはどれほどの確率なのか。
ほとんど皆無に近いような気がするが
そうでもないものなのだろうか? わからない。
少なくとも、私には理解できなか
っ
たしありえないと思
っ
ていた。
思
っ
ていたけど、私は自分が思うにほとんどありえない確率の
そんな男に出会い、恋をしてさらにそれでも足らず
何もかも捨ててもいいとさえ思い。
そこまで思うだけでも少ないと思うのに
私は
……
私たちはついに一線を越えて
なにもかも捨てる決心をした。
それくらい好きだという決意表明をして
さらに燃え上がるが実際は行動に移さないという人もいるようだが
私たちは、決意表明をしてさらに本当に行動に移そうとした。
かけおち。
チケ
ッ
トは相手が用意してくれた。
温かい所にしようと話し合
っ
た。
荷物は少なくてよい。
自分たちの身勝手だから最低限のものだけを持
っ
ていこうとい
っ
た。
待ち合わせは空港で。
それまでは連絡もとらないことにしよう。
そしてでも、万が一
万が一、気が変わ
っ
たら
やはり捨てられないと思
っ
たらその時は
来なくていい。
お互い、もしも相手が来ないまま飛行機が出てしま
っ
たら
終わりなのだと思
っ
て 黙
っ
て 自分の、今までの自分の人生に戻ろう。
そう約束した。
羽田発、24時30分。
私は迷わない。
私はすべてを振り切
っ
て空港へ向か
っ
た。
そして待ち合わせ場所で、祈るような気持ちで待
っ
ていた。
飛行機は定時に出発し、私はロビー
に残され
彼は元の生活に戻
っ
たのだと悟る。
これからどうしよう。
もう飛び立
っ
たのに未練がましく
カウンター
で確認する。
4月16日、24時30分発の飛行機はもう出ましたよね。
カウンター
の女性は不思議そうな顔をする。
「はい
……
。4/
16日24時30分発というのは昨日ですよ」
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