てきすとぽい
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【BNSK】2016年7月品評会
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BBQデビュー
(
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
)
投稿時刻 : 2016.07.03 22:24
字数 : 3052
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BBQデビュー
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
6月の、中間試験が終わ
っ
たばかりの深夜、大学のクラスのグルー
プラインに
「BBQしようぜ!」
というのが流れてきた。
発信元は学部で一番目立ちたがりの男子で、入学以来完全にぼ
っ
ちだ
っ
た私が顔と名前を一致させている数少ないクラスメー
トだ
っ
た。
なにがBBQやチ
ャ
ラ男め、日本人なら屋外で肉を焼く催し、もしくはせめてバー
ベキ
ュ
ー
とは
っ
きり表記しろや! などと思いながらも、私は大学入学の記念に買
っ
てもら
っ
たスマー
ト・フ
ォ
ンの画面から目が離せなくな
っ
た。
「いいね!」
「いつ?」
「どこで?」
男子と仲の良い数人のウ
ェ
イ系男女がそれに反応して、とんとん拍子に計画は進んでいく。あ
っ
という間に、次の土曜日の昼に大学構内の芝生でやることが決定した。
「当日参加も全然OKやから、返信くれなか
っ
た子も気が向いたら来て」
カラフルな絵文字付きのメ
ッ
セー
ジで計画は締めくくられた。
日程や買い出しの打ち合わせに積極的に返信していたのは学部の中でも私が最も苦手としているいかにも「リア充」と言
っ
たタイプの明るい学生たちだ。もしも(あり得ないことだが)面と向か
っ
て「ビー
・ビー
・キ
ュ
ー
来ない?」と言われたら反射的に「いやいやいやいやいやいや」とい
っ
て断
っ
ているところだが、文字だけのやりとりを端からただ眺めた末に「ふらりと顔を出すぐらいのノリでもいい」と言われると、少し気にな
っ
た。
正直、毎日最前列でひとりで講義を受け、昼の食堂でも会話をする相手がいない生活がつらいと感じていた。もしかしたら、もしかしたら、普段とは違う場所にこ
っ
そり潜り込んで、酒に酔
っ
たクラスメイトと接したら、今までより親しくなれるかもしれない
……
などと考えたのだ。
土曜日、私は、グー
グル先生に「BBQ
服装
大学生」と尋ねて出てきた画像を参考にしたフ
ァ
ッ
シ
ョ
ンをキメて、大学へと向か
っ
た。
開始から少し経
っ
たぐらいの頃合いを見計ら
っ
て、バー
ベキ
ュ
ー
会場へ向かう。心臓が壊れるかと思うぐらいの動悸がして、暑さとは関係ない汗が全身を流れていた。構内に入るとすぐに焼き肉の匂いが漂
っ
てきた。普段ならいい匂いだと思うかもしれないのに、緊張で、朝からなにも食べていないのに全く食欲が湧かない。
ウ
ェ
ー
イ、みたいな声が聞こえてきて、あ、どうしよう、め
っ
ち
ゃ
盛り上が
っ
てる、と思
っ
た。大学のクラスは全部で五十人で、バー
ベキ
ュ
ー
会場にはざ
っ
と二十人ぐらいがいた。名前のわかる人から、わからない人までいるけど、とりあえずみんな楽しそうに笑いあ
っ
ている。もうだめだ、あの中に入る勇気は出ない。さりげなく通りかか
っ
たふりをしてこのまま家に帰ろう。そう思
っ
て、私は歩行速度と姿勢が極めて自然になるように細心の注意を払いながら彼らから目を背けてそばを通り過ぎようとした。そのとき、
「あー
っ
! きたきた!」
と、大声がしたので、思わず顔を向けた。ば
っ
ちりと、BBQ発起人の男子と目が会
っ
てしま
っ
た。私は予想外のことにフリー
ズした。
発起人男子は既にアルコー
ルが入
っ
てるのか顔が赤い。缶ビー
ルを持
っ
てこ
っ
ちに小走りして来た。
「ウ
ェ
ー
イ! 待
っ
てた待
っ
てた! こ
っ
ちこ
っ
ち!」
そう言
っ
て缶ビー
ルを手渡してくる。私は促されるままバー
ベキ
ュ
ー
会場に連行された。連行されたが、発起人男子はすぐに別の女の子のところへ行
っ
てしまい、私はぽつんと取り残された。私の全身と同じぐらい汗をかいているビー
ルの缶の側面を眺めながら固ま
っ
ていると、
「飲まないの?」
と背後から男の子の声がした。振り返ると、BBQ中心メンバー
に比べるとやや地味な印象の男子が、にこにこしながら紙皿と割り箸を私に手渡してきた。
「あ、あ、ありがとう
……
」
「もしかして、ビー
ル苦手?」
「あ、あ、う、うん、にがて
……
」
そう言うと、彼は人混みの中に入
っ
てい
っ
て、クー
ラー
ボ
ッ
クスに手を突
っ
込んだ。。
「交換しようか」
にこりとほほえみながら差し出されたのは、ラムネだ
っ
た。懐かしい。小学生のころは今ほど非リアでもなか
っ
た私は、同級生とよく駄菓子屋に買いに行
っ
たものだ。独特の瓶の形とラベルと中のビー
玉が目に飛び込んできた瞬間、緊張が少しほぐれた気分にな
っ
た。
「ありがとう
……
」
飲めないビー
ルの缶を手渡す。心地よい冷たさを残した瓶が右手におさま
っ
た。
彼がビー
ルを開ける音と、私のラムネを開ける音が重なる。ぷし
ゅ
ー
っ
という炭酸の音が喧噪にかき消される。
「ラムネは好き?」
「う、うん、こどものころ、よく飲んだ」
親しげに話しかけられて、おそるおそるその顔を見つめ返した。第一印象は「ち
ょ
っ
と地味」だ
っ
たが、笑顔が人なつ
っ
こくて好印象だ。
「このビー
玉不思議だ
っ
たよね」
「う、うん、どうや
っ
て入
っ
てるのか不思議だ
っ
た」
「小さい頃、取り出せないかなと思
っ
てひ
っ
くり返したりしなか
っ
た?」
「うん、した。あと、飲むとき、ビー
玉がね、じ
ゃ
まで、上手く飲めなくて、空気飲んじ
ゃ
っ
て、げ
っ
ぷが出たりとか
……
」
思わずそこまで言
っ
てしま
っ
てから、口をつぐんだ。まずい、と思
っ
たけど、相手は屈託なく笑
っ
ていた。
「あのさ、男の前でそういう話しない方がいいと思うよ」
あはは、と明るく笑われて、ち
ょ
っ
と恥ずかしか
っ
たけど、悪い気分にはならなか
っ
た。私みたいなコミ
ュ
障に話しかけて気を使
っ
てくれた上、女の子扱いされた! と思うと、むしろ嬉しか
っ
た。
それからしばらく、他愛もない話をしたり、肉を食べたり、沈黙を分かち合
っ
たりして、時を過ごした。どれぐらい経
っ
ただろうか。
「ウ
ェ
ー
イ! そろそろお開きにしま
ぁ
~
す! 片づけの前に先にお金集めさせて
~
!」
BBQ発起人男子がよく通る声で叫び、その場にいる人数を1、2、3
……
と数え始めた。参加者は総勢18人のようだ
っ
た。スマー
ト・フ
ォ
ンでなにやら計算した後、一人当たりの参加費用が発表された。
「俺、財布取
っ
てくるわ」
一緒にいた彼が私のそばを離れた。私も鞄から財布を出し会計係の女子にお金を渡した。
最初はどうなることかと思
っ
たが、来てよか
っ
た。初めて話す男の子と仲良くなれたし、月曜から大学で会
っ
ても普通に会話できる友達になれればいいな
……
そう思
っ
ていた。
「あれ? みんなち
ゃ
んとお金出したー
? 一人分足りないんですけどー
」
ぼちぼち片づけが始ま
っ
た頃、会計係の女子が叫んだ。みんなが「出したよー
」とか「数え間違いじ