てきすとぽいトップページへ
第34回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
 1  8  9 «〔 作品10 〕» 11  18 
 投稿時刻 : 2016.08.21 00:44 最終更新 : 2016.08.21 00:55
 字数 : 1000
5
投票しない
更新履歴
- 2016.08.21 00:55:00
- 2016.08.21 00:44:41
旅立つまで
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.


 私は目を覚ました。最初に気付いたのは、私を取り囲んでいる白い球体だた。十個あまりのそれがびしりと集まて、私を上から覆いつくしていた。私は身を縮こませてじとしていた。そうしていると私のぬくもりがそれらに伝わるような気がした。
 やがて時が経つと、小さな音が頭上から響いた。様子を伺うと、球体の表面がひび割れ、そこから小さく尖たものが飛び出していた。やがて十二の小さな生き物が中から出てきた。短く柔らかな毛に覆われた、私の水かきの上に乗りそうなほどの大きさの生き物だた。すぐに目を開け、甲高い声で鳴いた。その途端、私は強烈な空腹を覚えた。小さな生き物たちは私を促すように鳴くと、おぼつかない足取りで歩き出した。私はそれについていかなければいけない気がした。理由はわからないが、そう思た。
 小さな生き物たちの、短すぎる足で移動できる場所は限られていた。平らで段差の少ない地面を、水の流れが速すぎない水面を、ゆくりゆくりと、しかし必死に進んでいく。計十三体の我々はすぐに食べられるものを食べつくし、その度に場所を変える。一日中それを繰り返し、私は毎日必死にそれについてゆく。繰り返す度に、彼らは徐々に大きくなた。
 時折、死角のない広い場所を通過すると、鳥や猫が私を狙て襲いかかてきた。ある日、一体の小さな生き物がそれから私を守ろうと戦た。そして私の代わりに攫われ二度と戻らなくなた。そのようなことが何度かあた。あるときは、段差を登れずに集団から離れる一体があた。それきりそれとは二度と会ていない。あるときは何の前触れもなく、息をしなくなている者もあた。何度突いても目を覚まさなかた。そんなことが何度かあるうちに、小さな生き物はいつの間にか三体になていた。
 随分と大きくなた三体は、羽根の形もだいぶん私と同じになた。いつものように、水の上でぼんやりしていた私は、彼らの完成した翼がはためき、水面に波紋を作るのを見て、もう、これからは彼らにはついては行けないような気がした。理由はわからないが、そう思た。その途端、私の胸の内を肯定するかのように、大きく、大人の声で鳴いて、三羽は空へ羽ばたいていた。小さくなていく姿を私はいつまでもいつまでも見ていた。

 私は目を覚ました。不思議な夢を見ていた。今日から子どもたちは手を離れ私はひとりだ。暫く会ていない夫でも探しに行こうか。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない