第36回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・白〉
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時間ウサギには時間がない
投稿時刻 : 2016.12.10 23:47
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時間ウサギには時間がない
ra-san(ラーさん)


 時間ウサギには時間がありません。今日もいそがしくあちこちを走り回っています。

「どうしてそんなに時間がいつもないんだい?」

 友人の万年ガメが聞きました。

「ボクは明日にも死ぬかもしれない。そう思うといてもたってもいられないんだよ」

 時間ウサギはそう答える時間も惜しむように走り回り、ついに切りかぶに転げてケガをしてしまいました。

「うーん、うーん。はやくしないと死んでしまう。まだまだやることがいっぱいあるのに」

 万年ガメが時間ウサギのお見舞いに行くと、ベッドの上で時間ウサギがうなされています。万年ガメは時間ウサギにリンゴをむいてあげながら言いました。

「ケガは悲しいことだけど、ボクはキミとこうしてゆっくり過ごす時間ができてうれしいよ」

 気持ちがさくさくしていた時間ウサギはこう言いました。

「それはキミが万年も生きられる時間を持っているからだろう」

 そんな嫌味に万年ガメは悲しい顔で首をふりながら答えました。

「ボクに時間はいっぱいあるけれど、キミと過ごす時間だけは作れなかったんだよ」

 そう言われた時間ウサギは、アッと思い返しました。今までの自分のやることのなかに、この友人と過ごす時間があったのだろうかと。

「……ごめん」

 時間ウサギがしょんぼりと頭を下げると、万年ガメは小さく微笑みながら、むいたリンゴを差し出しました。時間ウサギはそのリンゴをゆっくりと、時間をかけてあじわいました。
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