第39回 てきすとぽい杯
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扉互秘関
酔歌
投稿時刻 : 2017.06.17 16:01
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扉互秘関
酔歌


 こんにちは、トイレです。

 都内の公園に建てられた小さな一角。そこに私はいます。別段高性能なわけでは無いので時々お客さんに怒られますが、私がどうこうできるわけでは無いので既装のウトで満足してもらています。あ、でも一応『音姫』なるものは導入されているみたいですが、残念なことにここ、男子トイレなんです。設計者さん……

 公園から近距離に高等学校があるので学生さんがよく来られたり、仕事帰りの酔た社員さんがお吐きになることも多々。だけれど、みんな共通して私の事を丁寧に扱てくれます。

 あ、学生さんですねー。携帯を握りしめて、徐に座りました!随分と青い顔で、汗もかいています。メールで必死に何かを書いているようですから、見てみましう。

『さら、もう怒らないで。俺が悪かたから』
『何言てるの悪いの健二じん、そんなの知らないし』
『しうがない事だたじんか』
『知らない。もう別れる』

 大きなため息……彼女さんでしうか……私たちトイレはこういう光景もよく目にします。相手が彼女上司誰彼かまわずに、人は人に見せたくないことは大抵トイレでするようです。学生さんは粘ることをやめ、退席していきました。

 次は会社員さんですね……この手の方は匂いが少々きついので、本音は早く出て欲しいです。この人も携帯……人は話すことを止めてしまたみたいですね。

『デん、今度の土曜会えない?』
『いいよ』
『プレゼントも持ていく!』
『ありがとう』
『…なんか今日テンシン低いね』
『そんなことないよ! ごめんね、ちと決めたいことがあて』

 会社員さんは、静かに出て行きました……何があたのでしう?

 あれ?先ほど出て行たはずの学生さん、お腹でも壊したんでしうか。

『おい、それどういう事だよ』
『だから、私は健二じなくて、別に好きな人ができたの! だからもう健二とは付き合えないの!』
『は? ……誰だよ、○○か? △△か?』
『そんなの誰だていいでし、とにかく、健二とは付き合いたくないの!』
『そうかよ! 勝手にしろよ!』

 ため息が個室に散漫する……ただ、息がキツイので、できれば出てからして欲しい……他のお客さんにも影響が……

 まーたですか。入れ代わり立ち代わりで会社員さんとその匂い。でも大丈夫! 常備されている消臭君がすべて包み込んでくれます! なかなか頼れる人なんですよねー。実は好き。そう思うと、学生さん……ドンマイ!ところで、何やらまた会話が続いています。

『デん、どういうこと?』
『浅沼さんの事が好きなんです』
『いや、でも、そんな、急に言われても』
『浅沼さんは私のこと嫌いなんですか?』
『そんなことは……一目見たときから大好きだよ』
『なら、なら付き合て下さい』
……分かたよ。とにかく、土曜日に会おう』
『楽しみに、してます』

 なんということでしう! こんな小さな個室から恋が生まれるなんて! 私感動しちいました。でも、会話がどこか不自然だたような気もします。ともかく、また一つ幸せが生まれたということをお祝いしましう。

 ただ一つどうしても気になたことが、〈さら〉さんと〈デ〉さんの携帯番号が同じということです。

 人て四字熟語とか作るじないですか。だから私も今日の出来事で作てみました。
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