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第39回 てきすとぽい杯
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セカイノオワリ
 投稿時刻 : 2017.06.17 16:01
 字数 : 2510
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セカイノオワリ
永坂暖日


 世界の終わりは憂えいていた。この世界が始またときに、すでに世界の終わりの概念は目覚めていた。なんていて世界の終わりだ。世界が始まれば終わりがあるのだから、自我は目覚める。目覚めるのかと思われるかもしれないが、目覚めるのだ。もう目覚めてしまているのだ。
 我思う。故に我あり。
 世界の終わりがそんなことを考えてしまうと、なんだか不吉な感じがしないでもない。なんていて世界の終わりなのだ。世界がくるくると回り、そこにいるいろんなものがあくせく動き回ている間にも、余すところなくすべてのものがあらゆるものが無自覚に平等に無慈悲に、世界の終わりに向かて突き進んでいる。
 世界の終わりに到達する前に息絶えてしまうものの方が多いだろうが、それはそれで、「そのものの世界の終わり」なのだ。誰かの小さな世界の終わり。世界の終わりの子分か子どもか孫か曾孫みたいなものである。
 そういう意味では、世界のありとあらゆるものが世界の終わりに突き進んでいると思うと、寂しくはない。世界の終わりに真実たどり着けるものはごく限られていて、それがいつになるのかは世界の終わり自身にもわからないことだけれども、遠い遠い未来から、世界の終わりは現在をのぞき込み、みなが世界の終わりにやてくる日を今か今かと待ちわびている。

「この世界を終わらせたりはしない。絶対に」
 不屈の魂を持つであろう勇者ぽい者が、時折、世界の終わりの目前にやてくる。魔法とか魔王とかがある世界の住人であるその者は、こんなにも世界の終わりを目の前にしているのに、そんなつれないことを言う。
 ちとそこの君、そんなこと言わず、せかく世界の終わりの前まできたのだから、のんびりしたまえよ。
「よくぞここまで来たな。しかし、もう遅い。この世界は終わるのだ」
 勇者ぽい者と対峙する魔王ぽい者は、憎しみではちきれんばかりに真赤に充血した目をしている。
 いいぞ、もとやれ。せかくここに世界の終わりがいるのだから、衆目にさらさない手はない。世界の終わりは魔王ぽい者を応援しています。
 しかし、彼らの目には世界の終わりは写ていない。
 それも仕方がないこと。世界の終わりに自我はあれども姿形はない。世界の終わりだからその意志は世界全体にまんべんなく同じくらいの厚み(※形がないので厚みというのはあくまで便宜上の表現です)で広がていて、いつでもみんなが世界の終わりにやてくるのを待ている。あまりに当たり前にそこら辺に存在しているので、世界の中にいるものの目には映らないのだ。
 そんなわけで、彼らは世界の終わりを目の前にして、終わらせるだの終わらせないだの、すたもんだしている。やめて、わたしのために争わないで! の一言も言いたくなるが、言たところで誰の耳にも届かない。
 仕方なく眺めていたが、いつまでたても決着が付かないので少々飽きてきた。飽きてきたのだが、彼らは世界の終わり云々言いながらもめているので、去ることもできない。いい加減にどうにかしてくれと思ていたら、勇者ぽいものの説得で魔王が改心してしまた。世界の終わりの前から、彼らの姿が急速に離れていく。
 もうどちでもいいからととと決着をつけてくれと思ていたが、いなくなてしまうと、やはり寂しい。世界の終わりはみなにとて遙か遠く、目前までやて来るものはなかなか現れない。小さな世界はいつでもどこでも終わているが、やはり大きな世界ともなると、そう簡単に終わたりはしないようだ。
 世界の終わりがいるのだから、世界の始めもいる。しかしあまりにも遠くにいすぎて、そして世界の始めは、世界が始またその一瞬にしか存在していなかたので、その自我は世界の中に溶けてしまて残滓すら見当たらない。世界の始めと終わりの間である過去と現在と未来もいるのだが、遠すぎる過去は、世界の始めと同じで少しずつ溶けていているし、現在はたた今の一瞬にしか存在していないし、未来は無数にありすぎて自我という自我が絡まり合てなにがなんだかわからない。世界の終わりという、未来の中でも特異的な一点のみが自我を保ち続け、あらゆるものが自分の前に来るのをひたすら待ち続けているのだ。
 おいでよ、世界の終わりへ。

「これさえあれば、世界が変わるんだ」
 おやおや、またなにやら世界の終わりに直面している者がやてきた。終わるのではなく変わると言ているが、たぶん変わらないで終わるから、世界の終わりの前にいるのだろう。ふんふん、なになに? 世界中のみんなの暮らしを一変させるようなすんごい発明をしてしまたわけね。その世界ではとても画期的でコスト面でも優れており、しかも材料は普遍かつ安価なもので済む。なるほど、すばらしい。世界の終わりがすぐそこにあるのにそうと気づかず、それを普及させようとしていることがすばらしい。世界のみんなも普及するのを心待ちにしているから、世界の終わりが満を持して登場するのももうすぐそこだ。いいぞ、もとやれ。
「悪いが、そう簡単に変えてもらては困るのだよ」
 黒いめがねに黒い服を着た、なにやら怪しげな連中が現れて、すんごい発明をしたそいつに、怪しげな薬を無理矢理押し込んだ。世界の終わりの前に、そいつの世界が終わりそうだと思ていたら、急速にみなの姿が遠ざかていく。そう簡単に変えてもらては困るのも困るのだ。
 またどの存在もが遠くなてしまい、世界の終わりは寂しくなる。まあ、待ていずれまた、どこかの世界の終わりが近付いてくるのだが。そしてまた、遠ざかていくのだが。
 ようやく皆の前にお披露目されるのかと期待し心躍らせてその瞬間を待つのに、いつも期待外れの結果に終わる。それもこれも、世界の終わりが、世界の終わりの地点で待ているからだ。わたし待つわ、いつまでも待つわ。そんな根性でいたから、いつも期待外れの結果になてしまうのだ。これではいけない。
 世界の終わりは決意した。待ち続けるのはもうやめた。自分から踏み出さなければ、何も変わらないのだ。勇気を持て、一歩前へ。
 世界の終わりの前に、あらゆるものが急速に近付いてきた。
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