てきすとぽい
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第43回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動6周年記念〉
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約束
(
todatori
)
投稿時刻 : 2018.02.17 23:45
最終更新 : 2018.02.18 00:45
字数 : 1000
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2018/02/18 00:45:39
-
2018/02/17 23:45:27
約束
todatori
わたし死んだら幽霊になります。
そう言い続けていた後輩の佐野が死んだ。
あまりにそれを言い続けるので、じ
ゃ
あそうな
っ
たら死後の世界がどんなだか教えに来いよ、と約束させた。むろん冗談に決ま
っ
てる。
だから告別式の夜、部屋の鏡に佐野の姿を見つけた俺はすぐに約束のことを思い出した。
「先輩、葬式に来てくださ
っ
てありがとうございました」
鏡の中で佐野が頭を下げた。どこまでも律儀なやつだ。最後に別れた時よりもふ
っ
くらとして顔色もよく、出会
っ
た頃を思い出した。元気にな
っ
たのならよか
っ
た、と危うく口に出しそうになるほど。
「で、どんな感じ?」
俺は出来る限りラフな態度で、事態に動じていないふうを装
っ
た。
「そうですね
……
夢から覚めたみたいな感じです」
佐野はぼんやりと視線を俺に向けた。こんな優しい目をしていた
っ
けか。
「まだ死んで間もないせいか、先輩に説明できる段階ではないようです。すみません」
あやまるなよ。死んでまで。叱
っ
た記憶ばかりが思い出される。あやまるのは自分のほうではないか。今が最後の機会じ
ゃ
ないか。いや、最後の機会はもう逃してしま
っ
たのだ。
「その
……
痛いとか怖いとか、大丈夫だ
っ
たか。そ
っ
ちに行くとき」
俺の質問に、佐野は幽霊らしからぬ爽やかな笑顔を見せた。
「たぶん、少しは苦しか
っ
たと思うんですけど。でも、忘れました。通り過ぎると一瞬で」
そうか。と息を吐きながら言
っ
た。胸がつま
っ
ているのを隠したか
っ
た。
「だから先輩も、あまり心配なされることはないですよ。怖いのは最初だけです」
「何度もあ
っ
てたまるかよ」
俺の乱暴な返事に、佐野はころころと笑
っ
た。そしてふいに振りかえ
っ
た。鏡の中で。俺もつられて自分の後ろを振りかえ
っ
たが、自分の部屋があるだけで、誰もいない。佐野もいない。再び鏡に向かうと、佐野がま
っ
すぐ俺を見ていた。
「どうやら移動しなければならないようです」
そう言うと頭を下げた。
「おい、待てよ」俺は思わず鏡に手を伸ばした。
「そんな報告じ
ゃ
足りない」
「最後まであまりお役にたてなくてごめんなさい」
鏡が曇
っ
て、佐野の顔がぼんやりと霞む。
「ち
ゃ
んとした報告持
っ
て、出直してこい」
鏡に向か
っ
て俺は叫んだ。「待
っ
てるから」
遅いですよ、と向こう側から佐野の声だけが聞こえた。「待
っ
ていたのに」
気がつくと、夜が明けていた。俺は鏡の前で座り込んでいた。
曇
っ
た鏡は、それから何も映すことはなか
っ
た。佐野が閉じてい
っ
たのだ。
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