てきすとぽい
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第43回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動6周年記念〉
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届かないもの
(
ra-san(ラーさん)
)
投稿時刻 : 2018.02.17 23:30
字数 : 576
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届かないもの
ra-san(ラーさん)
どうした
っ
て、届かないものがある。
放課後の教室で窓越しの夕日を浴びる彼女は、いつものように何気ない笑顔であたしの心に影を差す。
「
――
くんが好きなんだ」
会話の最中にさらりとされたその告白は、真剣でも深刻なものでもないようで、けれどそんな好意の相手が彼女の中にあることに、あたしはどうしようもないわだかまりを胸に秘める。
「
――
ち
ゃ
んは、誰か好きな人いないの?」
無邪気にそう言う彼女の手を掴んで、真剣で深刻な告白をしたい衝動に駆られながら、あたしは「今は別にいないよー
」と、声が裏返らないように慎重に丁寧に何気ない笑顔をつくりながら、できる限りのさらさらな嘘を吐く。
「えー
? 隠してなくない? なんかあたしだけ告白してて損じ
ゃ
ない」
不満気にあたしをつつく、彼女の白く細い指。
「本当いない
っ
て。でも
――
くんは確かにカ
ッ
コイイよね」
そこに指を絡ませて、彼女のし
っ
とりとした手の温もりに触れたい。
「あ、横取り厳禁!」
ダメダメと手で×をつく
っ
てプルプルと首を振る彼女の髪が揺れる。
「取らない
っ
て。ほら、そろそろ帰ろう」
その髪に手を触れて、彼女の小さな頭を抱きしめたい。
「取
っ
ち
ゃ
ダメだからねー
」
校門での別れ際にもそう言
っ
て遠ざか
っ
ていく彼女の背中が、夜の暗がりへと消えていく。
あたしは夜の風を背中に受けて、彼女とは反対の道へと歩き出す。
どうした
っ
て、届かないものがある。
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