星が見ている
僕らは似た者同士だと、よく言われていた。例えば自分が満足するよりも相手が満足すればそれで充分だ
ったり、なにかに没頭する機会があったとしても相手の顔色ばかりが気になって集中できなかったり。まるで綱引きの勝負がつく瞬間にお互いが手を離すような、相手の影の中に自分の居場所があると信じているみたいな、自己主張が苦手な控えめな2人だった。
惑星になれなかった衛星が輪を作るように、会社で浮いていた僕たちは自然と結びついた。惑星の地殻や気象の変動を2人並んで眺めているうちに仲間意識が芽生えたのかもしれない。孤独に公転している寂しさを互いに補っただけかもしれない。それでも僕たちは幸せだった。君が僕で、僕が君だったと気づくまでは、ずっと一緒に惑星の周りを漂っていたかった。
お互いを求めあったのは、笑えるぐらいの自己欺瞞だったね。僕は君の中に僕を探して、君も僕の中に君を探していた。自分が自分でもいいんだと、安心したいだけだったね。
届きそうで届かない場所に隠れて、分かりあえそうで分かりあえない事実に目を瞑って、燃えそうで燃えない恋に溺れていただけだったんだ。
「映画を観るのが好き」
僕も好きだ。物語には僕がいないから。隣の君は、暗闇に紛れていないから。
「ちょっとは自慢できる彼氏になりたいからさ、少し仕事を頑張ろうと思うんだ」
喜んで笑ってくれたと誤解していた。寂しかっただけだったんだね。
突入速度は18キロセコンド。大気圏に突入した衝撃波を、世界中の誰もが観測しただろう。僕の身体はバラバラに砕け、その破片のほとんどが燃え尽きてしまった。ほんのわずかに残った意識が、地表に辿りつく。
君の目には輝いて見えただろうか。それともただの惑星の変動に見えたのだろうか。青い大気が君の姿を隠してしまって、僕にはもう確認する術がない。叶うと信じて叶わなかった僕の願いは、君にとって意味があったのだろうか。分かっているのは、最初から手を繋いでいなかったことだけだ。