第47回 てきすとぽい杯
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新人教師
投稿時刻 : 2018.10.20 23:39
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新人教師
ポキール尻ピッタン


 学年主任の教師に勧められ向かいの席へ座る。手元の資料をめくりながらチラチラと視線を送てくる彼の態度に軽い嫌悪を覚え、俺は背筋を伸ばしたまま小さくうつむいてテーブルの模様を眺めていた。
「あまり気を張らないでも大丈夫ですよ。生徒は繭みたいなものですから、大切に優しく温めて、彼ら自身が殻を割て飛び立つのを見守て下さい。先生は、ほら、翼を授ける栄養ドリンクみたいなものですから」
 自分の冗談に声を上げて笑う学年主任は大袈裟に肩を揺らしながらも、俺の姿を視界に捕らえたままだた。あらゆる所作が俺を値踏みしている。新人の教師に歩み寄ているつもりなのだろうが、壁の向こうから覗いているだけ。
 生徒は無垢な繭かもしれないが、学年主任が作る壁は醜悪な繭に似ている。
「分かりました。これからもご指導よろしくお願いします」
 大きな声で頭を下げた俺は微笑みを浮かべ繭に籠もた。

 卵パク並んだ繭が、この教室の構図だ。一緒にいるようで一緒にいない、お互いに大切なことを隠したまま並べられている。
「先生は依怙贔屓してるの?」
 優秀な生徒をたまたま連続して褒めたに過ぎない。それがなぜか理不尽となる。
「してないよ。頑張たら褒めるし、悪い子としたら先生は怒るよ」
「わたしだて頑張たのに」
 脈拍が加速する。どの生徒も順番に褒めるつもりだた。平等に優しく温めるつもりだた。順番を間違えた? いや、順番を考えたこと自体が間違ているのか?
「ごめんね。でも、この間率先して掃除をしていたのはちんと見ていたよ。偉いと思う」
「そうじない」
 ひび割れた繭の向こうになにかが広がている。ぼんやりとして形を保てないまま、ゆくりと確実に俺へと向かてくる。
 生徒は泣きながら俺の腹を何度も殴ていた。角のように尖た思いが心に突き刺さる。
繭を壊してしまた。俺は選んではいけなかた。繭の中身が醜態なものだと分かていたのに、俺は手を伸ばしてしまた。
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