ノリ
仕事帰りの飲み会で散々楽しんだ後、気が付けば女子社員が帰
ってしまい男子三傑になっていた所、俺は「よし、キャバいこうぜ」とふざけて言ってしまった……
(やっべー、男だけでむさ苦しいから冗談交じりにキャバクラ行こうぜとか言っちゃったら、マジで行く事になってんじゃんかやっべー……今日結婚記念日だよやっべー……)
「これが大人の嗜みかー!」
「先輩ってそういうこと言うキャラだったんすね」
(いや、やっべー、意外とLINEとかだと下ネタバンバン言っちゃうタイプの人間だと思われてない、俺、コレ。そんなことないからね! しっかりしてるからね! テメエ後で女子社員(特に向かいの猫好きのKちゃん)にばらしたりしたら承知しないぞマジ)
「いや、んー、でも、やっぱさ、やめにしない?」
「えー! 折角行く雰囲気になってた所じゃないっすかー! しかも言い出したの先輩ですよー」
「何か理由でもあるんですか?」
「いやあ、んまあ無いけどさあ、ほら。不健全じゃーん」
「一番不健全なの先輩ですよ」
「じゃあ予約しときますね。えーっと『バリバリシニアNO.1クラブ』っと」
「いや、急に真面目じゃん。唐突に傷つけること言ってくるじゃん。うるせえ、こっちは気を使って言ってやったんだよ! お前は不健全っていうかKYなんだよ! あと『バリバリシニアNO.1クラブ』って何? 完全に熟女好きが集まるところじゃん。何、俺ってそう見られてんの? 実は裏でそうやって弄ってたりするの?」
「いや、でも、たぶん大丈夫っすよ」
「いや、ね、ほら『たぶん大丈夫っすよ』とかいうじゃん。『たぶん』ってなんだよお前、こっちは多分の世界で生きてねえんだよバカヤロー! テメエ! 若い奴こそな、身体大事にしなきゃいけないんだよバカヤロー!
いやもうなに? なんか人いっぱい来だしたよ何? 別にパワハラじゃないですから!」
「……先輩が俺の初めて奪った……」
「は? いや、は? 何言ってんのお前。これお前、完全に俺だけ解雇られちゃうやつじゃん。え? 部長に頼んで減給させるぞお前だけ」
「パ、ワ、ハ、ラ」
「パ、ワ、ハ、ラ」
「いや何その『いーけないんだ』みたいなノリ。後、多分パワハラじゃねーし、セクハラだし」
「よお、お前ら、何してんの」
俺が振り向くと、そこにいたのはこれまた仕事帰りらしい、部長だった……
「あ、部長! 先輩がセクハ」
「ああああああああああああああああああああ! 何も言ってませんんんんん。部長!何でも!無いです!」
「あれ、部長、なんですかその首の、マーク? おしゃれっすか?」
(いや、お前、これ……完全に唇の跡じゃん。部長、もうかましてきた後じゃねーかこれ! いつの間にかイッてたよこの人、めちゃめちゃ早いってかまだ10時だよ!? いろんな意味で早すぎるよこの人!)
「あ、あはは……気付かなかったよ、ありがとう教えてくれて。おかげで『バリシニ』に通ってることばれなさそうだ」
(部長思ったより回数刻んでたー、しかも常連っぽいよこれ。だってなんか略しちゃってるもの。『バニシリ』だもの、一歩先行っちゃってるもの)
「ま、まだまだお若いですねー部長……」
「部長! 先輩が俺の初めて奪ってセクハラしてきました!」
(おい)
「何!? それは本当か!」
「本当です! 自分から誘っておいて、しかも減給するって……」
「君、いい加減にしないか。こんな若い子に『バリシニ』はちょっと……」
「そこじゃねえし妻いるお前が言ってんじゃねえ!」
「4人で予約しときました」
「いやなんでだよ!」
4人で行きました。