第49回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動7周年記念〉
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盗人
茶屋
投稿時刻 : 2019.02.16 23:26 最終更新 : 2019.02.16 23:27
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- 2019/02/16 23:27:31
- 2019/02/16 23:26:50
盗人
茶屋


 へへへ、あしでございますか。
 へ、あしこれでもしがない盗人でございまして。
 いや、こりここだけの話にしといてくださいましよ。
 酒の勢いで口が軽くなおりますが、まだお縄につきたかね
 あしだてね、酒を飲んでいつも口が軽くなるわけじでさ。こりあくまで旦那だからこそ、旦那を信頼してるからこそ軽くなる口だ。
 だからこの話はあくまで御内密に。
 へへ、墓の中まで持てつかさい。
 迷惑だなんて言わねでくだせ。たまにあ、あしも身の上話をしたくなるんでさ
 生まれたときの記憶なんざないが、少なくともここいらの生まれじないのは朧気に覚えておりやす。
 当然生まれたときから盗人じあねですし、どうやら盗人とは縁のない家柄の生まれだたようで。
 そいつが何の因果か、親は殺され、こんなみすぼらしいなりになて、目当てのものがあたら自然と手が伸びる盗人稼業もしかり身に沁みこんじまた。
 釈迦も八幡もあたもんじございませんな。
 あしに、こうして酒を奢てくれる旦那のほうが仏様よりも偉い。世辞じありませんぜ。少なくとも仏様は酒を恵んじくれませんからね。
 まあ、寺の仏像だたら酒代くらいにはなるかもしれやせんが。
 それで、あしが何泥棒かて?
 泥棒にもいろいろございまして、賽銭泥棒に、下着泥棒、香典泥棒に米泥棒、給料泥棒にはては時間泥棒。
 何でもかんでも他人が持てるもんだたら、盗んでしまえるものでもんでございますな。
 人てもんが、何かを自分のもんだて思ちまう限り、盗人てもんは生まれてきちまうもんなんでございますな。
 ひとが、大事だな、大事だなて思うものほど、盗まれちまうもんなんでございますよ。
 さて、ここらであしはお暇させていただきますよ。
 へ、もう旦那からは、頂戴いたしましたから。
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