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ラミア
(
住谷 ねこ
)
投稿時刻 : 2019.05.19 13:22
字数 : 735
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ラミア
住谷 ねこ
電車に乗
っ
ていると、おとなしく本を読んでいたラミアが
「おばあち
ゃ
ん、今までで一番悲しか
っ
たことはなあに?」と聞く。
真
っ
黒な瞳、真
っ
黒な髪、そして真
っ
黒な肌。
ラミアの母親はアフリカのなんとか
っ
ていう部族の娘だ。
息子はなんだ
っ
てそんな遠い国の、ほとんど裸族とい
っ
ていいほどの
文明もなにもありそうもない小さな村の娘とそんな関係にな
っ
たのか
な
っ
てしま
っ
たものは仕方ないとはいえ息子は放浪の旅をしたあげくそうな
っ
て、
そのままそのアフリカの何とか部族で、ほぼ裸で暮らすつもりだ
っ
たらしいが、
ラミアの母親がラミアを生んですぐ亡くな
っ
てしまい、面倒なことにその部族では純粋な部族民しか受け付けず、ラミアの母がいなくな
っ
た以上、よその国の男と半分しか部族の血の入
っ
ていない娘は村においておけないとかなんとかで追い出され、しかたなくまだ生まれてまもないラミアを連れて帰国を余儀なくされ、いくところもないまま家に戻
っ
てきたのだ
っ
た。
「そうねえ。一番悲しか
っ
たことね
ぇ
」口だけで返事をしながらラミアの読んでいた本を見る。ダチ
ョ
ウがライオンやヒ
ョ
ウと戦い、最後は木にな
っ
てしまうんだ
っ
たかしら。
「今度の誕生会、うちでやるんでし
ょ
?パパも帰
っ
てきてくれるかな」
絵本から目を離さずにラミアが言う。
「パパはどうかしらね
ぇ
。お仕事が忙しいから
……
」
パパは、息子は帰
っ
てこない。どこにいるのかわからない。それより、生きているかどうかもわからない。息子はラミアを置いてすぐ、またアフリカに向か
っ
たのだ。
以来、4年間なんの音沙汰もない。
一番悲しいのはなんだろう。
「ラミアが泣いているときかな」そう言うと、ラミアは目を大きく見開いて
その目はどこまでも黒く深く、遠く。
そして絵本に目を落として「ごめんね」 と言
っ
た。
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