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先輩、背中ががら空きでしたよ
202X年。
コロナウ
ィルス、香港の沈静化を共産党政府はできなかった。
そして、民主化を求める勢力が台湾と手を結んだ。
当然のことながら、その後ろにはアメリカがいた。
共産党政府はロシア、北朝鮮を国内の支配のために招き入れた。
そして、中国大陸は内戦状態となった。
私は民主化同盟の狙撃手、スナイパーのマークスマンをやっていた。
マークスマンはスナイパーをアシストしたり、狙撃中に敵の強襲からスナイパーを守ったりします。
よくゴルゴ13とかマンガだと、狙撃手が一人ですが、実際の軍隊の狙撃ではまずそんなことはありません。
マークスマンがいないと狙撃任務はできません。
マークスマンが狙撃のあたりをつけたりして、狙撃手は視界の狭いスコープで狙撃手を狙います。
スナイパーはセミオートの狙撃銃を使うので、いざ敵が襲ってきても連射ができません。
一方、マークスマンは基本的にはアサルトライフルをベースにした短距離の狙撃にも使え、連射もできるオートマチックの銃を使います。
今、私がマークスマンをやっているのは、訓練所で教官だった先輩です。
狙撃の腕は1,000m先のターゲットも狙える、凄腕です。
私も先輩ほどではないですが、自分で言うのもなんですが、スナイパーとしては優秀でした。
だからこそ、先輩のマークスマンとしてコンビを組むようになりました。2 / 6
この文章が公開される時には、中国は民主化され、私の名前も出せるのですが、今はまだ内戦中なので、名前は伏せます。
ただ、19歳の女性だと言うことまでは公開します。
高校を卒業して、民主化同盟に志願兵として入りました。
訓練の適正検査で狙撃に向いている、いえ耐えられる人間性。
過酷な環境でも耐えられるメンタル。
格闘技で自分の身を守れることから、スナイパーとして訓練されました。
スナイパーも狙撃の時には当然、ハンドガン、ナイフを持って、最低限の武装はします。
ただ、狙撃時は狙撃銃を持ち歩くので、普通の陸兵みたいにアサルトライフは持ち歩けないので、ハンドガンとナイフで最後は戦うことになります。
そのために狙撃時はマークスマンがいます。
それができるために先輩のマークスマンになり、いざと言う時に先輩の背中を守るためにマークスマンになりました。
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もう内戦も終わりかけの頃の話です。
共産党政府の最高指導者を狙撃するチャンスを見つけました。
ただ、狙撃ポイントはベストとは言えないところです。
とは言え、内戦を終わらせるためのチャンスでした。
ビルの屋上からターゲットを狙うためにはビルの合間からやっとでした。
事前に場所を確認もできませんでした。
最高指導者が演説をするので、街も厳戒体制でした。
なんとか私たちは味方の情報収集したポイントに演説の直前に陣取りました。
そして、最高指導者の演説がはじまりました。
「先輩、かなり弾道が限られますので、ワンショットで決めてください」
「わかっている」
先輩と私は最高指導者の演説が行われるところを見ながら話した。
先輩はこういう時でもリラックスしている。
かと言って、緊張がないわけでもない。
だから、民主化同盟でもトップの狙撃手だった。
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「先輩、ターゲットが狙撃ポイントに向かっています。狙撃ポイントに立ったら、即、トリガーを引いてください」
「OK」
ターゲットは来た。
先輩はトリガーを引いた。
当然のことながら、ヘッドショットを狙っていた。
だが、顔の前を抜けた。
狙撃直前に入り、気象状況も調べられなかったから、当然だ。
長距離になればなるほど、気象状況の影響を受ける。
この日は空気が湿っていた。
すわ、階段から足音が聞こえてくる。
本来はワンショットで決められれば逃げられる状況の想定だった。
先輩は落ち着いた声で。
「もう、ワンショット狙う。背中を任せたぞ」
先輩は弾丸を装填しなおして、狙撃体制に入った。
刹那。
屋上の入り口に人民解放軍の舞台が五、六人入ってきた。
私は、階段から自分のアサルトライフルで対抗した。
ただ、狙撃も兼用しているアサルトライフルなので、すぐに弾は切れた。
もう、マガジンを交換している時間はない、すぐにアサルトライフルを捨て、拳銃を腰を引き出し、狙いを定めた。
しかし、人民解放軍も精鋭だ。
二人、仕留め損ねた。
一人とは格闘戦になった。
もう一人は先輩に向かう。
先輩、気づいて。
逃げて!
だが、先輩は狙撃に集中していて気づかない。
兵がアサルトライフを撃とうとするより早く、先輩はトリガーを引いた。
そして、私は「先輩!背中!」と叫んだ。
先輩は狙撃銃から手を離して、すぐに狙撃ポジションから離れた。
先輩は、ナイフを出し、兵へ向かっていき、胸を刺した。
一瞬だった。
そこで、私と格闘戦をしていた兵もひるみ、隙が生まれ、私も拳銃を撃った。
そして、私たちは屋上から逃走した。
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先輩は、ビルの入り口を出たところで。
「いけね、銃を置いてきた」
「ところで、当たったんですか」
「わからねぇ」
「当分、台湾にでも逃げましょう」
「そうだな。屋台でメシでも食うか」
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一週間後、世界中のメディアで大陸中国の民主化政府樹立のニュースがめぐっていた。
私と先輩は、台北で小さなアパートを借りて暮らしはじめた。
先輩は、あの時、私が「背中!」と言ってくれなかったら、この生活ができなかったと言ってくれた。
いつも先輩は背中ががら空きで、後ろから私に抱きしめられる。