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第10回 文藝マガジン文戯杯「気づいて、先輩!」
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ビターだけどスィートなチョコレート
 投稿時刻 : 2020.02.09 00:19
 字数 : 1999
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目次
1. 今日はバレンタインデー!
2. 会社へ出勤した。
3. 先輩は、既に出勤していて、スケジューラーとシステム手帳をチェックしていた。
4. お昼休みを過ぎて、ちょうど手が空く頃。
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ビターだけどスィートなチョコレート
樋口幸人


 今日はバレンタインデー
 昨日は定時で帰宅して、ベルギー製のチコレートを買てきて、それを溶かして、主任のためのチコレートを作たの。
 型は自分で苦労して作た、猫柄。
 それにホワイトチコレートでデコレーンしたわ。
 主任の喜ぶ姿が目に浮かぶ。
 今年こそ、主任が気づいて欲しい。
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 会社へ出勤した。
 私は入社三年目の人事部所属のビジネスパーソン。
 来年で四年目になる。
 最近は採用活動を最初から最後まで任せられるようになたの。
 それも、先輩である主任から仕事を教えてもらたから。
 主任は私より二年先輩。
 冴えないメガネをしているけど、髪は短めでさぱりしていて、ビジネスカジアルのコーネートもセンスがいい。
 素直に言えば、ライバルは多い。
 たまにメガネをはずして目薬をしたり、手を休めていると、結構、イケメンとわかる。
 他の部の女子たちも、それを見逃してはいない。
 仕事もでき、部長、課長からは信頼されている。
 実際、主任が採用を推した人々は実績をあげて活躍している。
 採用だけでなく、人事異動でも適材適所の配置を部長、課長に提案している。
 つまり、会社全体でもてる男性なのだ。
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 先輩は、既に出勤していて、スケジラーとシステム手帳をチクしていた。
 こういう自己管理ができるところが素敵。
 ただ、チコレートを渡すなら、今がチンス!
「主任、ちとよろしいですか?」
 私は主任に声をかけた。
「ああ、構わないけど」
 と主任が言た瞬間に主任の前の席の課長が言た。
「ああ、ちと、この書類をチクしてくれないか」
 先輩は課長のところへ向かいつつ、私に言た。
「ごめん、用件は見当がついているから、机の上に置いておいて」
 さすがに主任は今日はバレンタインデーと気づいていたか。
 しかし、あけない対応でちとがかりした。
 気づいてよ、主任。
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 お昼休みを過ぎて、ちうど手が空く頃。
 主任は私に声をかけてきた。
「ちと、リラクスペースに行けるか?」
 私は、どきどきした気持ちになた。
「ええ。大丈夫です」
 主任と私はリラクスペースへ行た。
 主任は私の前をほどよいペースで歩き、私をきづかてくれていた。

 主任はちと人が固まていないところへ私を座るように促した。
「ええと、ミルクテでよかたんだけ?」
「はい。あ、お金」
「なに、お返し。おごるよ」
 あらら。ずいぶん、安いバレンタインデーのお返しだ。
 今年も気づいてくれなかたのかな。
 主任は自動販売機から、ペトボトル入りの私のミルクテとブラクの缶コーヒーを持てきた。
「あいかわらず、ブラクなんですね」
「ああ。甘いものはどうも苦手でね」
「そうでしたね」
「まず、チコレートありがとう。昼休みに食べたよ。お前、よく俺の好みがわかたな。ビターコレートにデコレーンはストチコレート。それで俺が好きな猫の形」
 先輩は、笑みを浮かべた。
「主任、喜んでいただけましたか」
「ああ、うれしかたよ。去年はゴデバだたよな?」
「ええ、奮発しました。ただ、先輩はどうも喜んでくれなくて」
 先輩は、ちと恥ずかしげな表情になた。
「ま、うれしかたのは事実だけど、どうにも味が好みではなくてね。でも、ちんと食べたよ」
「それを聞いて、安心しました。今年はちと主任のことがわかてきたので」
 私も恥ずかしげに言た。
「ああ、お前も成長したと思たよ。よく、人を見る目ができてきた」
「また、主任は口がうまくて。どうせ、他の女性(ひと)からももらたんでし
 ちと、私は意地悪をして反応を探てみた。
「去年はね。ただ、今年はお前から以外のチコレートは部の女性全員からのイベントチコ以外はもらていないよ。筋を通すために断た」
 私は、驚いた。やさしい主任がなぜ、そんなことをするのだろう。
「それでホワイトデーなんだけど、ちと遅れるけどいいかな?」
 私の頭の中は疑問符だらけになた。
「ま、意味がわからないのよな。順を追て話すよ。まだ、内々の話だから他言無用で」
「はい」
 私は、バレンタインデーのお礼がなんでこうなるのか、ますますわからなくなた。
「お前は、次の人事異動で主任に昇進が内定している」
「え!?私が」
「ま、採用活動を一通りこなせて、後輩のトレーニングもできるようになたし、ポジシンをあげて、新たな経験を積ませるほうがいいだろうと部長、課長と俺の総合判断だ」
「でも、私が主任なると、主任は?」
 私はまたまた混乱した。
「新人時代から相変わらずだな。ま、そうやて疑問を正直に言えるところが逆に長所でもある」
 先輩はちと笑た。
「俺は、課長へ昇進する。だから、それまで返事を待て欲しいんだ。しかし、お返しは俺、一人では選べないな。指のサイズは人事で管理していないからな」
 先輩は真剣な表情をして、私を見つめていた。
 私の思いに気づいてくれたのですね、主任。
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