第57回 てきすとぽい杯
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運ぶバス
えく
投稿時刻 : 2020.06.13 23:41 最終更新 : 2020.06.13 23:44
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- 2020/06/13 23:44:13
- 2020/06/13 23:41:26
運ぶバス
えく


高校生である私は毎朝同じバスに乗る。
バスには私と同じく学校に向かうため多くの学生が乗る。
そのひとりに疎遠になてしまた幼馴染がいる。
彼は津田貴明。
いつのまにか津田と私は朝のバスで挨拶もしない関係となていた。
津田と私は幼稚園からの付き合いで「タカちん」と呼び毎日のように遊んでいた。
男の子同士のごこ遊びやら、緊張しながらバスを乗り継ぎ少々遠出をしたりと
非常に仲が良かた思い出である。
だが、中学生になたころから徐々に会う回数が減り、
高校生になてからは全く遊ぶこともなく、同じバスに乗ろうとも他人のようだ。
バスは様々な人間がそれぞれの経緯や目的があるにしても全く同じ場所に到着する。
しかし津田と住んでいる環境にしたら大差なく同じ学校に向かうという目的であるにも関わらず、
全くの他人のようになてしまたこと、それが非常に不思議だた。

ある日、生徒会活動が伸び、いつもより遅い時間、下校のバス停で津田と出くわした。
同じ学校であても下校時間は違うことが多いので初めてのことだた。
さすがに周囲にほとんどふたりだけだたので話しかけたほうが良いものかと考えていたら、
察してか幼馴染的な直感からか津田から話しかけてきた。
「おい!お前、最近どうなん。」
それは私の知るタカちんの口調ではなかた。
環境が関係だけではなく彼自身の性格まで変えてしまたのか。
「ん、特にぼうとして、なにも面白いことないかな。」
静かに、しかし非常にうろたえた私はつまらない返事しかできなかた。
「そうかい、お前はさ、女いねの。女ほしくね。」
ああ、どちらかというと繊細そうに見えた、というよりか今も殴りつければ簡単に砕けそうなほど弱々しく見えるのに、なぜそんなに低俗で荒らしい言葉を使うようになてしまたのか。
彼の生白い顔が余計に弱く見えた。
私が返事に困ているとバスが来た。
バスは私と彼を乗せた。
私と彼をそれぞれの目的地へと帰した。
その日以来、津田との会話はない。
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