これは愛かもしれないしそうじゃないかもしれないなにかわからないけど抗えないきもち。~それもこれも愛かもしれなかった
「で、どうしたよ、その後」
タカキが聞く。唯一 彼女との経過を全部話している友達だ。
「何もせず、タクシー
で送った?」
「いや…」
「めでたくやり遂げた?」
「いや…」
「んな訳ねぇな。号泣する女の上で腕立て伏せポーズだもんな」
タカキはくわっくわっと笑い 俺の顔を覗き込む。
「それで 萎えなかったら変態だよな」
変態じゃなく犯罪だ。「犯罪」なんて立派な名前ももったいない…ただのクソヤローだ。
「手…」
「え?」
「手つないで眠った。朝まで」
「へえ?」
「泣き疲れて眠りかけたから、そっと離れようとしたらさ」
「うん」
「手、出してさ。ずっと握ってて、お願い、って」
眠れるわけなかった。片手を拘束されて寝返りも打てず、かすかに彼女の寝息が聞こえる中 ただただじっとしていた。今日は身体が痛い。
「そんな女はさ、最悪 結婚してくれとか言うよ」
どういうこと?それって 最悪?
「元カレの子供ができたから、あなた父親になって、とかさ」
そうか、そんな事態になったら、俺、どうするだろう。
そう思うと同時に、彼女と結婚した俺、彼女の子供と3人で過ごす「幸せな家族」の映像が目に浮かぶ。
とことん俺はバカだ。
「今、幸せなファミリーの想像したろ」
「いや、まぁ…」
「ダメだこりゃ。一生その女、グダグダするぞ。元カレが忘れられないと泣き、新しい出会いがあったと泣き、やっぱり貴方じゃダメなの ごめんなさいとか言いながら……」
コイツは小説家志望だ。こうなったらもう想像は止まらない。
「言いながら…?」
「お前の手だけは絶対離さない」
──ああ、残念な俺。残念な俺。
「まあ、オレもそんなお前をずっと見続けるんだろうけどさ、愛を持って」
タカキの見つめて来る目に何だか別の「愛」が含まれているような気がしないでもなかったが、
「有難う、お前っていいヤツだよな」
不覚にも涙がぽろっと零れた。
「そうかな。オレはお前がオレの腕の中で号泣したら……」
「?」
「……襲う」
タカキはくるりと背中を向けながら そう言い、小さく「……かも な」と付け加えた。