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情景描写と音声情報が豊かだからかショートフィルムを観たような読後感を覚えました。ただ色彩情報が黒い犬のキャラのみなので、想起した映像はモノクロにとどまり少々もの足りなかったです。総天然色までとは言いませんが、映画「戦艦ポチョムキン」の赤旗のようにモノクロの中に鮮やかな色をした小道具が文中にあれば、もっと作品に惹かれた気がします。ロム猫先生の長所のひとつである鮮やかな家族描写がなかったのも惜しかったです。1シーンでも回想があれば妻と子のキャラが想像できてもう少し主人公に感情移入ができたと思います。
後半に連れて改行を増やし読み手のリズムを変える手法は面白かったです。文章を読むと間延びしていると感じる方もいるとは思いますが、文章を聴くとバラードのように言葉がしっとりと染みてきます。