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第10回 てきすとぽい杯〈平日開催〉
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魔女狩り
Wheelie
 投稿時刻 : 2013.10.18 23:43
 字数 : 842
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魔女狩り
Wheelie


 むかしむかしあるところに、貧しい夫婦がおりました。ふたりには子供がありませんでした。十年もの間、毎日神様にお祈りを続けたのですが願いは叶いません。「神様などいないのだ」と男は思いました。そうして西の小麦畑にいるという魔女に祈りを捧げました。
 ある晩、男はむくりと起き上がり言いました。
「西の畑に行てくる」
「まあ、こんな夜中にどうしたというの」
 女は驚いて男を引き止めます。しかし男は鎌を持て出かけてゆきました。明け方になてようやく返てきた男はひと束の小麦と一握りの生種を持ていました。男はそのまま眠ることなく。麦を挽きそれから捏ねました。大きな琺瑯のボウルに布巾を慎重に被せて
「発酵がすむまで絶対に見てはいけない」
と言いました。
 お日様が高い位置に登た頃、ふくらんだ生地はむくむくと布巾を押し上げ、中から赤ん坊の鳴き声が聞こえてきます。女が驚いて布巾を取ると、ボウルの中にはとても美しくかわいらしい赤ん坊が泣いておりました。
「神様からの授かりものだわ」
 女は涙を流して喜びました。男はただ黙て赤ん坊を抱き上げました。

 十数年が経ち、小麦から作られた赤ん坊はとても美しい少女になりました。少女の噂は遠くの街にまで流れ、何人もの貴族が少女のところに求婚にきました。そうしてその誰もが魂を奪われ身を滅ぼしました。噂が流れるようになりました。
「あれは魔女だ」
 と。ある日、少女の母親は夫の秘密を知てしまいました。あの子が神様の子供でもなければ自分の子供でもないことを。男と西の小麦畑の魔女のあいだに

 ***

「ここで終わり?」
 娘は不満そうに声を上げる。
「そう、まだここまでしかできていない」
 僕は『魔女狩り』とラベルに書かれたテープをデキから取り出す。
「このシトフルム、どこかに応募するの?」
「いや、自分のために作たんだ」
「ふうん? パパの好きにしたら」
 娘はソフから立ち上がり冷蔵庫を開ける。僕はその後ろ姿を眺める。まるで魔力を持ているような美しさだた。
 もちろん妻には似ていない。
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