てきすとぽい
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第12回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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ジュカ
(
犬子蓮木
)
投稿時刻 : 2013.12.14 23:42
字数 : 1606
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ジュカ
犬子蓮木
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僕は眠
っ
ていた。
メニカはまたどこかに行
っ
ているらしい。魔法使いは夜に仕事をするんだよ
っ
て彼女は言う。子供はなにも心配しなくていいから、と僕にくわしいことは教えてくれない。
だから僕は、次のときこそメニカの後を追いかけてみようと思うんだ。
今日はダメだ
っ
たけど、次こそは。
2
僕は眠
っ
たふりをしている。
メニカに仕事が入
っ
たことを知
っ
ていた。だから今日こそあと追いかけてどんなことをしているのか確かめてやろうと思
っ
ていた。
街のイヤな奴がいうみたいにおかしな仕事をしてない
っ
て証明するために。
足音が聞こえた。
僕は寝返りをう
っ
て扉を背に布団の中でまるまる。
扉が開いた。メニカだ。長いロー
ブをひきずるような音がする。メニカは僕のベ
ッ
ドのそばに寄
っ
てきたらしい。メニカが僕のあたまの上の布団をあけた。
バレないようにうその寝息をだす。
大丈夫だろうか。
メニカは魔法使いだ。
でも、心は読んだりできない
っ
て言
っ
てた。
だから大丈夫なはず。
もしそんなことできるならも
っ
と早くから怒られてるはずだし。
「い
っ
てくるね」
メニカが小さな声でつぶやいた。
僕はドキドキしてふるえている。
なんだかすごいやさしそうな声だ
っ
た。
どこにいくのだろう。
い
っ
てら
っ
し
ゃ
い、と僕は心の中で言
っ
てから、追いかけるからね
っ
てじぶんと約束した。
布団があたまの上に落ちてきて、び
っ
くりしてたら、扉が閉まる音がした。
4
僕は布団の中で震えている。
メニカの後を追いかけて、メニカの仕事がなにかを見てきた。そこでメニカがや
っ
たことはま
っ
たく信じられないものだ
っ
た。
足が痛い。帰りに慌てて走
っ
たときに転んでしま
っ
た。血がでたけど、かまわず逃げるように帰
っ
てきた。
玄関の扉がしまる音。メニカだ。帰
っ
てきた。
僕はぎ
ゅ
っ
と小さくなる。メニカが僕の部屋に近づいてくる足音が聞こえた。そして扉がひらく。
「ただいま」
メニカが言
っ
た。小さな声。僕が起きていると思
っ
てはいないだろう声だ。
メニカが僕のかぶ
っ
ていた布団を静かにずらす。
眠
っ
ているふりをしよう。なにも見なか
っ
たことにしよう。そう思
っ
たけど、ダメだ
っ
た。僕の震えはとまらなくて、メニカが驚いたような声をあげた。
「ジ
ュ
カ、どうしたの?」
メニカが僕の額に手を置く。それから僕のからだを軽くゆす
っ
た。
「
……
うん」
僕はいま起こされたとでも言うようなふりをして、メニカのほうに体を向けた。
「寒い? 顔ま
っ
さおだよ」
メニカが杖で床をコツンと叩くと錆びついた燭台が伸びてきて、その先に火がとも
っ
た。
「火にあたりな。それとも暖炉のところへ行こうか」
6
「メニカは人殺しなの?」
僕は震えながら言
っ
た。
暖炉の中で炎がこうこうと燃えている。
僕は、メニカが女の子の命を奪うところを見てしま
っ
たのだ。
メニカは、僕がメニカの仕事を見た、と言
っ
た瞬間から目を大きく開いて黙
っ
ていた。い
っ
し
ゅ
ん、怒られるかと思
っ
た。でも怒らなくて、ふう、と息を吐いてからメニカが話してくれた。
「そうだよ」
メニカが言う。
「お金をもらうために、そういうことをするときもある。もちろんしないときもあるけど」
メニカが真剣な表情で僕を見つめる。それからいろいろ説明してくれた。
「生きていくために命を奪うことは仕方がないことだよ。魔法使いでなくても、何かを食べて生きている」
僕はメニカの話を聞こうとするけど、どうしてもなんだかわからない。
「わたしのこと嫌いにな
っ
た?」
「うん
……
そんなことするメニカは嫌い」
「そ
っ
か
……
」メニカが暖炉の火を消した。「いろいろ混乱してると思うからもう寝なさい」
メニカが僕を連れるように立つ。一緒に部屋へと戻
っ
て、僕は布団の中にはい
っ
た。
「見たことを他の人に言わないということだけは約束して」
「
……
うん」
「よし、偉いね。それじ
ゃ
あおやすみ」
メニカの唇が僕の額にあたる。
僕は返事をできなくて、ベ
ッ
ドの中で涙を流して、いつのまにか眠
っ
てしま
っ
た。
夢は僕がメニカに殺される夢だ
っ
た。
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