第12回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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豆腐を買いに。
秋吉君
投稿時刻 : 2013.12.14 23:45
字数 : 921
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豆腐を買いに。
秋吉君


私は走ていた。おつかい。金沢市内にある老舗の豆腐屋に向かて全力疾走。
いい加減にしてほしいよね。高校受験を控えた一人娘に、豆腐買てこいだ?
年季の入たママチリをこぐこぐこぐ。太ももいてーす。運動不足す。
街は雪が散らついていて、ほんとに寒い。いい加減、こんな田舎からオサラバ
したいのにいかんせん私てばまだ中学生。向かてる豆腐屋てばさ、同級生
の三郎の店なんだわこれ。ださ。豆腐屋のせがれで、中学出たら跡継ぐんだと
さ。ま一応幼馴染のよしみてやつで、道で会えば挨拶くらいはすけども。
正直ださ。いまどき中卒てありえなくね? そんで悪いけど綽名のとおり、
ガイモ君なんだわ。豆腐なのにジガイモて何それ笑えねえ。こいつが
つり野郎で。私の乳ちら見してんのモロバレだつの。そんで勝手に顔
赤らめちて。「豆腐掬い上げるときてなんか俺嬉しくてなあ」だて。
さ。おめー乳見てたじん。何が豆腐の乳色だつーてどわー
糞ガキがいきなり飛び出してくんなつーの! ママチリのブレーキ錆びてる
つーの! てかいてええええ! 膝の皮べろりんちだわ! 
さんクセえ私! あいたたた結構血が出てるよコレ。乙女のおみ足が台無し。
ガキはびくりして泣き出して。泣きたいのはこちだつの死ねフ
あー信号待ちのばあちんまで心配顔で寄てきて、いやあんた何の役にも
立たねえから来なくていいし、「あら京子ちん?」じねーよ、よく見り
隣のくそババアかよ、いや大丈夫じねーし見り分かんだろガキうるせえよ
てめえが泣くと私が悪者みてえだろうが! 「あらあら、足から血が出てるわよ」
て言われなくても十分承知。ごめんなさいね、ちと急ぎますからええ大丈夫、
て立ち上がて痛痛痛、よろよろ歩いてようやく到着さぶちんの豆腐屋ね、
くそたれがきび豆腐なんてどこで買ても同じなんだよあほくせえ、
こんなおつかいに出されなきこんな目にも遭わなかつーのに私てば
店に入てにこり笑て「炎の豆腐くださあい」てかわいい声だしちて。
この時間、必ず店にいるのな、三郎。じとりした目で私の乳見るのやめてね。
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