第12回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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Wheelie
投稿時刻 : 2013.12.14 23:46
字数 : 537
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Wheelie


 最後の大戦が終わた後、この星の気候は完全に狂てしまた。
「北半球からの映像?」
 畑仕事から帰てきたマークが、拭きながらモニタを覗きこむ。
「海底ケーブルは全て破壊されたし、衛星も機能していない。そもそも北半球は人間が生存できる環境じないんだ」
 この国を含む南半球のほとんどに、夜は訪れない。
「だけどこれはなんだ?」
 ジイはウインドウを開く。錆びついたラプトプの液晶に映しだされていたのは、漆黒の空に降り積もる雪。
「百年前の戦争でたくさんの血が流れた。もし北半球に生き残りがいたとしても、シルターの中で餓死しているはずだ

て、じいちんが言てた」
「映像のタイムコードは今日の日付だ。これはリアルタイムで送られてきてるんだよ」

「あ!」
 ジイが声を上げる。銀世界に溶け込むような、真白な服をきた少女が映像に映し出される。
「人間……?」
 自分たちとは違う青白い肌。二人は食い入るようにモニタを見つめる。

 少女は星空を見上げて、それからもう一度こちらを向く。唇が小さく動く。なにかを伝えようとしている。
「行こう」
「どこに?」
「北半球に、彼女たちのいるところに」
 人生を賭けでも行かなければと思う。ジイは納屋からいくつかの植物の種を取り出す。
 太陽が炎のように輝いていた。
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