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「この中に犯人がいる!」
全員が揃ったのを確認し、工房から出てきた僕は、探偵のその台詞に足を止めた。
「は、犯人って?」
大福屋の店主は声を震わせた。おじさん、こんなに怯えなくてもいいのに。
「この中の誰かが私を殴ったって言うの!?」
声を上げた彼女に同情してしまう。殴られて怖かっただろうな。
……と、そこで気がつく。
「この中に犯人が?」
自分が用意した場が、まさかの推理ショーの場になってしまうなんて。
あぁ、もしかして、探偵さんの名前を騙ってメールを出したのがいけなかったんだろうか。でも、自分がメールを送るより、探偵さんの名前で送った方がみんな来てくれるかなと思ったんだ。
小さな商店街で起こった傷害事件。僕はそれに胸を痛めていた。事件以来なんだが様子がおかしい大福屋の店主、事件のことが気になるのか捜査を続ける刑事のもとに足しげく通うOL、その二人をストーカーのようにつけて回る探偵。
なんだかみんな少しおかしくて。ここはケーキでもごちそうして、親睦を深めたらいいんじゃないかと思っただけなのに。
みなと同じように探偵を見た。
用意してある紅茶とショートケーキ、いつ出せばいいのかな。
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