てきすとぽい
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第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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The Not-Friendly City
(
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
)
投稿時刻 : 2014.05.06 23:22
最終更新 : 2014.05.06 23:43
字数 : 2102
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2014/05/06 23:43:13
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2014/05/06 23:36:21
-
2014/05/06 23:32:43
-
2014/05/06 23:22:43
The Not-Friendly City
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
御堂筋線とかいう地下鉄に乗りたか
っ
たのだが、御堂筋と書いてある看板に従
っ
て高架下を歩いていたら何故かJRの切符売り場にたどり着いた。JR大阪駅の御堂筋口というところだ
っ
た。ま
っ
たくも
っ
て梅田駅という場所は恐ろしい。やはり僕は都会というのには向いていないのだ。
身近にあるのはいつだ
っ
て辛気臭い田舎の光景だ
っ
た。垢抜けない町並み、噂好きの近所のおばさんたち、圧倒的物資とイベントの不足。アメリカに住んでたときだ
っ
て、郊外に住んでいて流行のおもち
ゃ
が手に入らなくて不満ばかりだ
っ
たけど、8歳で日本に帰国した後も、首都圏から遠くはなれた場所に住んでいたから、セー
ラー
ムー
ンの放送は2クー
ル遅れだ
っ
たし、仮面ライダー
にいた
っ
てはTVで見ることが不可能だ
っ
た。僕は田舎が嫌いだ。両親がそうではないものだから余計に不満だ
っ
た。赤毛のアンの実写映画とか、あんなのの何に情緒を感じればいいというのだ。ただ田舎で田舎
っ
ぽい娘がはし
ゃ
いでるだけの映画だ。両親はあの手合いの、田舎が舞台の辛気臭いビデオを小さい頃からよく僕に買い与えた。その中に、キ
ャ
スパー
という子供向けの映画も含まれていた。
道に迷いながらもう2時間はあてもなく歩いている。こういう時
っ
てなんて言うんだ
っ
け、足が
……
ステ
ィ
ッ
クみたいになる
……
、ええと、ああ、そうだ、足が棒だ。帰国してから10年も経つというのに、未だに僕は時々日本語の単語がする
っ
と出てこなくて英単語を口にしてしまうことがある。そういうのが昔から同級生に嫌がられている自覚はあ
っ
たのだが、どうしようもなか
っ
た。別に英語ができることを鼻にかけてるわけではなか
っ
たのに、どうして悪意を持
っ
て解釈されてしまうのだろう。笑い飛ばしてくれたのは、あの子だけだ
っ
た。
見える、のは、小さい頃からの悩みだ
っ
た。害を加えるやつばかりではないけど、誰にでも見えるものじ
ゃ
ないのが見えるのは、や
っ
ぱり薄気味悪か
っ
たから。そんな僕のコンプレ
ッ
クスを払拭してくれたのもあの子だ
っ
た。8歳の、帰国したばかりの頃、出会
っ
た、あの子。学校で友達ができず、めそめそしてた僕を、気遣
っ
てくれた。毎日僕の部屋に来て、遊んでくれた。そんなあの子は、僕がアメリカから持
っ
てきたものに色々興味を示していたけど、中でもキ
ャ
スパー
の映画が何故かず
っ
とお気に入りだ
っ
た。
見たことのない読者諸氏のために簡単にあらすじを説明しよう。幽霊屋敷と呼ばれているある空き家がある。そこに、大金が眠
っ
ているという噂を聞きつけてや
っ
てきた強欲な男女と、幽霊研究家の親子がや
っ
てくる。屋敷にはいたずら
っ
子の幽霊が3人と、心優しい幽霊・キ
ャ
スパー
が憑いていて、いたずら
っ
子3人はその招かれざる客を4人とも追い出そうとするのだけれども、キ
ャ
スパー
はキ
ャ
ッ
トという名前の研究科の娘が好きにな
っ
てしま
っ
て、色々とトラブルはあるけれど、最終的にオトモダチになる。娘は学校に友達がいなくて、ホー
ムパー
テ
ィ
ー
でぼ
っ
ちになるのだが、そこへ、一時的に人間の姿になれたキ
ャ
スパー
がエスコー
トしに登場するのだ。
三浦、と名乗
っ
た子猫の幽霊は、この映画が何故か大好きで、何度も何度も僕にこのビデオを再生しろ、と要求した。高校生の頃だ。僕は思わず言
っ
てしま
っ
たのだ。「確かに映画の中では二人は仲良くな
っ
てハ
ッ
ピー
エンドだけどさ。幽霊は死なないし歳を取らないけど、人間はいつか大人になるしここを出て行くし死んじ
ゃ
うから、別れなき
ゃ
いけないんだぜ。哀しいだろ。俺とお前の関係だ
っ
てそうだ
――
」
っ
て。それは確かに本音だ
っ
たのだけど、別に、三浦を傷つけるつもりじ
ゃ
なか
っ
た。
三浦は困
っ
たような顔をして、言
っ
た。「私が一緒にいたら、タケルは哀しいの?私は、タケルと一緒にいないほうがいい?」
御堂筋線を探すより、誰かと触れ合うことの方がず
っ
と難しくて苦しい。高校生の時の自分は、どうしても
っ
と、自分の気持ちをち
ゃ
んと伝えられなか
っ
たんだろう。
三浦がいてくれたから、学校で一人でも寂しくなか
っ
た。自分は決して孤独じ
ゃ
ないんだ
っ
て思えてた。でもそれじ
ゃ
あ、ダメなんだ
っ
ていう風にも、思
っ
ていた。三浦だけじ
ゃ
なくて、ち
ゃ
んとした現実の人間の友達も作らなき
ゃ
、これからさき、僕は生きてはいけないんじ
ゃ
ないか
っ
て、ち
ょ
っ
と焦
っ
てただけだ
っ
たんだ。もしかしたら、そんな弱音を口にしていたら、三浦はまた、僕に勇気をくれて、背中を押してくれたかもしれない。でも、現実はそうはならなか
っ
た。僕の言葉足らずのせいで、三浦は、僕の前から姿を消してしま
っ
た。あれから2年、ず
っ
と三浦の姿を見ていない。
御堂筋線だ
っ
て、これから泊まりたいホテルの場所だ
っ
て、明日下見に行きたい大学の場所だ
っ
て、多分、勇気を出してその辺を歩いているヒトに聞けば、き
っ
と親切に場所を教えてくれる。でも、一度傷つけて自分の前から姿を消してしま
っ
た子猫の幽霊とのよりの戻し方なんて、誰に聞いた
っ
て教えてはくれないだろう。僕は取り返しのつかないことをしてしま
っ
たのだ。
未練がましく未来を見られない未熟な男のため息が人ごみの中に吐き出され都会の空気と混じり消えてい
っ
た。
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