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R-667CとR-667Bはクオリアを有するアンドロイドである。彼らは宇宙船を二人で操縦していた。うり二つの顔をした双子の彼らは、二人でいたほうがよく働くということで、主人から二人で動くよう言いつけられていたのだ。
すると、彼らは寂れた宇宙船を見つけた。その船はまるで幽霊屋敷のように、宇宙塵にまぎれて存在感を失くしている。しかしそれはたぐい稀な巨大さを誇っていた。
こんなに大きいのだ。きっと金目になるものが見つかるだろう。都合のいいことにこれは幽霊船だ。中身を拾って勝手に持っていっても、誰も文句は言うまい。彼らは自身らが大金に囲まれている想像をした。
「どうだ。素晴らしいな」CはBに、自分の想像したイメージを送信して言った。
「ふむ。確かに素晴らしい。しかし考えてみろ。金に囲まれるのはおれたちではないだろう」
「そうだ。主人だ」
Cが送ったイメージに描かれている大金が、札束ではなく金貨であったのならば、Bもまた無意味に気分を良くし、こんな現実的なことは言わなかったことだろう。同一のイメージをもとにしているのに演算結果には差異が出る。それは両者ともに別々のクオリアを有しているからだった。
「ともかく入ってみようじゃないか」
「そうだな。それがいい」
入口を見つけ、船を停める。
迷ってしまった。Bは壁を伝って、おぼろな足取りで出口を探す。Cともはぐれてしまった。Bは歩く。船のなかにめぼしいものなどひとつも転がってはいなかった。誰か先に来た人がすべて持っていったのかもしれない。まったくなんということだ。
廊下の向こうに、人影を見つけた。おお、Cか。声をかけるも、反応が返ってこない。Bは不思議に思いながらもそこへ歩いて行った。
その人は幽霊だった。男の子の幽霊だ。幽霊とはクオリアと大脳皮質が結合して現れる現象のことだ。アンドロイドに大脳皮質はないが、それに準ずるCPUが勝手に干渉されているのだろう。こういう場合はスルーするのが鉄則だが、Cは男の子に攻撃することを選択した。クオリアを有するアンドロイドは、このようにしてマニュアルから外れた行動をおこすことができる。ちなみに幽霊は人間ではないので、傷つけたところでロボット三原則の第一条に反することはない。
Cは幽霊を内蔵レーザーで焼き切った。幽霊に穴が開いた。
幽霊が倒れる間際にレーザーを跳ね返してきた。レーザーはCの体を直撃し、貫いた。
Cは倒れた。
倒れた幽霊が、実はBであることにも、つまりその男の子の姿というのがCとうり二つのBの姿であることにも気づかずに。
彼らは機能停止した。