第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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幽霊船
投稿時刻 : 2014.05.03 23:30 最終更新 : 2014.05.06 23:41
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 コンビニ。そうだあれはコンビニだ。R-667Aは蹲りながら自分が記録している場景を思い浮かべた。地球を発つ前日、主人は彼をコンビニに連れて行てくれた。宇宙開発機構のコンビニには、いろいろと珍しいものが売られており、主人は強力な妨害電波を発する機器を彼に買てくれた。これで弟たちによ、イタズラしてやれよ。主人はこどもぽく笑ていた。
 そうだ。これはただのイタズラだたのだ。Aは深い悔恨を感じながらふたつの壊れた機械人形を見つめる。二人の弟は見るも無残な姿で、暗闇と鉄錆に混ざていた。
 クオリアというが、それは単に演算処理中に複数の重ね合わせ状態を作り出し、認識パターン、行動パターンを確率化させているにすぎない。妨害電波を送ることでアンドロイドの見る世界は、簡単にゆがめることができた。兄弟の姿をまたく知らない顔の幽霊に錯覚させることも、小さな自分の船を巨大な幽霊船に見せることも造作のないことだた。
 もうこんなことがあてはならない。彼はふと、まだR-667Dが来ていないことに気が付き、立ち上がた。妨害電波を早く止めて、せめて一番下の弟だけでも守てやらねばならない。
 しかしあの機器はどこにあるのだろう。
 彼もまた、クオリアの持ち主だた。
 明るいはずの船内は、暗い。
 向こうから歩いてくる人影があた。弟のDだろう。しかし幽霊にしか見えない。もし双子たちのように攻撃してきたら、どうすることもできない。
 賢明なDは、素通りすることを決めたようだ。彼は弟に話しかけようとしたが、そうしたら攻撃されるだろうと思いとどまり、立ちすくむ。
 向こうから驚嘆の声が聞こえた。自分の船がこの短時間で寂れてしまたと錯覚している。
 そのうちクオリアが大脳皮質だけでなく宇宙空間に充満している暗黒エネルギーと結合して、この宇宙船は本当に幽霊船になるだろう。
 そして我々はそのころには主観と客観の区別も付けることなく、アンドロイドのくせに人間の幽霊のように、来訪者を待ち続けることになるのだろう。
 誰かの船がやてきた。

(プロローグ・了)
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