てきすとぽい
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第19回 てきすとぽい杯〈日昼開催〉
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誰も知らない密林の物語
(
伝説の企画屋しゃん
)
投稿時刻 : 2014.07.13 16:15
字数 : 1465
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誰も知らない密林の物語
伝説の企画屋しゃん
ニトは気づけば、密林をさまよ
っ
ていた。
狩りの最中にブ
ッ
シ
ュ
に身を潜めていると、いつの間にか異教徒に取り囲まれてしま
っ
たのだ。
それから幾日が経
っ
ただろう。
集落の中でも屈指の戦士と呼ばれたニトだ
っ
たが、馬を駆る異教徒たちから逃げ切ることができず、手足に枷をはめられ、挙句に白い肌の異人に売られてしま
っ
たのだ。
異人たちが人狩りをしているという噂は、集落にも及んでいた。
ニトたちが知らない武具を使い、耳にしたことがない言葉を操り、時には別の国から来た異教徒と結託までして、この草原を我が物顔で闊歩する。
連れ去られた人々の数は、夥しい数にのぼ
っ
ていた。
彼らの目的は、あるものを探すことだというが、それが何なのかは判然としなか
っ
た。
俺たちをこんなに遠くまで連れて来て、何をするつもりなのか。
日の光も届かない鬱蒼とした密林を歩きながら、ニトはつぶやいた。
異人たちに自由を奪われた後、ニトは他の部族の者たちとともに海岸の砦に幽閉され、そして巨大な船に乗せられた。
何
ヶ
月もの間、大勢の囚われ人とともに糞尿にまみれた狭い船倉に押し込められているうちに、ある者がこう言
っ
た。
どうやら奴らが探しているものは、富らしい。俺たちは、見知らぬ土地で牛の代わりに働かせられるのさ。
横になることもままならない船倉の中で、その言葉は重たい響きを持
っ
て、人々に伝わ
っ
た。
それなら海に飛び込んで死んだほうがましだ。
ニトはそのようにも考えたが、異人たちも自死を警戒しているのか、甲板に出るときは厳重な見張りの目に囲まれる。
死ぬことさえ許されず、ニトは来る日も来る日も絶望という大海を漂
っ
ていた。
が、ある日のことだ。
船は激しい嵐に見舞われた。
船倉は何度も大きく傾き、そのたびに身体がしたたかに壁に打ち付けられた。
この時ほど、ニトが黒い肌に生まれたことを感謝したことはない。
扉の壊れた船倉から抜け出すと、闇にまぎれてニトは甲板まで駆け上が
っ
た。
記憶しているのは、荒れ狂う海に飛び込んだところまでだ
っ
た。
大量の海水を飲み込み、気を失
っ
たニトはやがて海岸に打ち上げられた。
彼方には、密林が果てしなく広が
っ
ている。
ようやく目覚めたニトは、何かに誘われるようにして海岸を離れてい
っ
た。
そうして当てもなく密林をさまようこと、数日間。
ニトは木々の合間に、人の影を見た。
「運がよか
っ
たな、兄弟」
相手はおそらく、そう言
っ
たのだと思う。
生まれ育
っ
た部族の言葉とは若干異な
っ
てはいたが、明らかに故郷の民が使うものだ
っ
た。
疲労困憊したニトは言葉を返す余裕もなか
っ
たが、相手はつづけてこう言
っ
た。
「俺もあの異人どもから逃げて来たのさ。今はこの土地の部族の奴らと暮らしている。あんたも、俺と一緒に来ればいい。喜べ、あんたは助か
っ
たんだ」
安堵がニトの身体を包み込む。
ニトは再び気を失
っ
た。
ここは何者も入り込めない密林だ。
意識をなくす直前、そんな言葉が投げ掛けられたような気もしなくもない。
何者の入り込めない?
富という探し物か逃れられる聖域という意味か。
薄れていく意識の中で、ニトはふとそう考えた。
それから500年後の2014年。
いまだ未開拓地が残るアマゾンの最奥で、ある部族が発見された。
現代社会と隔絶されていたにも関わらず、そこにはアフリカ系の遺伝子を持つ人々が住んでいた。
一体、なぜ?
謎は多く残るが、ともかく名称が必要だ。
研究費調達ために、発見者である学者はネー
ミングライツを募り、真
っ
先にアメリカの大手通販サイトが名乗りをあげた。
KDP村。
今ではその集落は、そのように呼ばれているとか、いないとか。
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