てきすとぽい
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第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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ミツマタノオロチ
(
永坂暖日
)
投稿時刻 : 2014.08.16 22:50
字数 : 1000
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ミツマタノオロチ
永坂暖日
元は、奇形であるが普通の蛇であ
っ
た。
頭が三つあるが、頭が一つの蛇の三倍、頭が良いわけでもなか
っ
た。
いつも近くに自分以外の頭が二つあ
っ
て、いつもついてきていたから、どうやら二つの頭は自分の一部らしい、ということは理解していた。
「真ん中の。さ
っ
きここにあ
っ
たネズミ食べた?」
「うんに
ゃ
。左のに横取りされた」
「違う。右のがもう食べた」
「嘘つくなお前ら。我、全然空腹なんですけど」
「頭三つあるからな」
「体一つだけど」
「前から思
っ
てたけど、それおかしくね?」
「待
っ
て。誰が何し
ゃ
べ
っ
たの」
理解していたが、自分以外の二つの区別はいまいち付いていなか
っ
た。
体は一つだが頭は三つあるので、ぞれぞれが腹減
っ
たな、といつも思
っ
ていた。それ故、頭が一つの蛇の三倍、その蛇は食べた。もりもり食べたので、もりもり成長した。
ある時その蛇の頭のどれか一つが、その蛇は知る由もないが地上に遊びに来た天女がう
っ
かり落としたおやつの仙桃を食べ、長寿を得た。
その蛇は自分が長寿にな
っ
たことも知らず、相変わらずもりもり食べていたので、気が付けば樹齢五百年を超える大木より太い体にな
っ
ていた。
「他の二つの。なんか我ら、体が大きくな
っ
てね?」
「ど
っ
ちか一つの。や
っ
ぱそう思う?」
「我以外の。道理で腹が減ると思
っ
た」
そうしてその蛇は、やはりもりもり食べた。
やがて山だけでは食料が足りなくなり、その蛇は人里へ向かい、そこでももりもり食べた。村人に石を投げられたが、その石も食べた。鍬や鋤を持
っ
て向か
っ
てくる村人は、口を開けて待ち構えて食べた。
数が減
っ
た村人は困り果てて、一人の巫女に助けを求めた。化け物退治が得意という円熟した美しい女だ
っ
た。
巫女を見たその蛇は色めきだ
っ
た。
「巫女萌え!」
「熟女も悪くない。むしろ良い!」
「待
っ
て。我、心は雌だ
っ
ていま気が付いた」
「ど
っ
ちか一つの。それマジ?」
「え、熟女好きのこと?」
「我もそれ気になる」
その蛇を退治しようと巫女が構えているのに、その蛇はもはや巫女そ
っ
ちのけであ
っ
た。
巫女は昔、双頭の蛇を退治したことがあ
っ
た。あの時はすでに頭の一つが潰れていたが、今回は頭が三つ。しかもどれも健在である。しかし、頭が悪そうだ。
そこで巫女は、呪力を与える代わりに自分の式神にならないか、と提案した。
「なるなる!」
「地の果てまでついて行きます!」
「えー
」
一つの頭だけ不満そうだ
っ
たが、その蛇はこうして巫女の式神とな
っ
た。
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