てきすとぽい
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第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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ト号壱拾参式
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2014.08.17 11:14
字数 : 1000
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ト号壱拾参式
茶屋
ト号壱拾参式はかつてあ
っ
たと言われている戦争の末期に作られた大型のヒト型戦闘兵器だ。
その戦争で活躍したヒト型兵器の最新型で人工を搭載している。
自分で考え行動することができる。もちろん全ては戦闘を想定してのことだ。
ところが彼が出撃する前に戦争が終わ
っ
てしま
っ
た。
そして長らくの平和が続いた。とても長く、戦争があ
っ
たなんていうことは忘れ去られてしまうぐらいには。
困
っ
たのはト号壱拾参式当人である。何もすることなく自分を必要とする戦場は消えてしま
っ
た。
最初、彼は処分されることに決ま
っ
たのだが、人工知能に対する倫理問題が想定された。
問題は保留するに限る。処分は当面保留だ。保留は担当者から担当者に引き継がれ、やがて何の保留かもわからぬまま保留され続けた。
自立補修機能を持
っ
たト号壱拾参式は未だに存在し続けている。保留の保留が続いた末に彼を作
っ
た組織は解体され、倉庫も取り壊されてしま
っ
ても。
住む場所もなく、広い公園でぽつねんとしている。
「君ロボ
ッ
トなの?」
ある日、少年が彼に声をかけた。
「その質問に対する答えは肯定です」
彼はそう答える。
「ふー
ん。強いの?」
「強弱は相対的観念です。さらに明確な質問を要求します」
「君面白いね。友達にな
っ
てよ」
「友達という概念は私にはわかりません」
次の日も少年はや
っ
てきた。一人で来ることもあれば、仲間を引き連れてくることもある。
少年たちは彼を取り巻き、周りで遊んだりした。
ト号壱拾参式はどこか奇妙な感覚を覚え始めていた。戦争には必要とされなか
っ
た奇妙な感覚だ。
それからしばらく少年たちはト号壱拾参式で遊び、成長し遊ぶことが少なくな
っ
てきても溜まり場になることは変わらず、時折悩み事を漏らされることもあ
っ
た。
しかし、間もなく戦争が始ま
っ
た。<外>からや
っ
て来たものとの戦いだ。
長らく戦争を忘れていた人間たちは、対向する術を持たなか
っ
た。
た
っ
た一つの保留されていた戦闘兵器を除いては。
ト号壱拾参式は<外>からの侵略者へ対する対抗兵器として出撃させることが決定された。
「絶対戻
っ
てこいよ。待
っ
てるからな」
出撃の日、青年にな
っ
た少年は見送りにや
っ
て来た。
「その要求は承認されました。必ず帰
っ
てきます」
彼は絶対の保証のないことを自分で確約したことに戸惑いを覚えながらも反重力ドライブを起動させ、空へと飛び立つ。
彼は戦いへと向かう。それが彼の存在理由だからではない。友達を守るためにだ。
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