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第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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突然の彷徨(イベントカード)
 投稿時刻 : 2014.08.17 14:53 最終更新 : 2014.08.17 14:54
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- 2014.08.17 14:54:40
- 2014.08.17 14:53:20
突然の彷徨(イベントカード)
永坂暖日


 狩人のあなたは、森の奥深くに迷い込んでしまうかもしれない。
 鬱蒼と茂る葉に遮られ昼でも薄暗く、風が吹くと聞こえる葉擦れの音に脅えている。森の奥は人外の場所。獲物を求めて森に入たあなたは、今や狩られる側だろう。
 深追いをするのではなかた、とあなたは後悔する。しかし、動物を狩て少しでも金に換えなければ妻や幼い子供を抱えて冬は越せない。
 日が傾いてきたのか、森の中はますます薄暗い。今日はもう諦めて寝られる場所でも探し、明日、改めて森を抜ける術を探そうか。そう思たあなたは、遠くにぼんやりとした灯りを見つける。人影もあるようだ。
 近付くと、枯れ葉に似た色の髪の長い若い娘が座り込み、天を仰ぎ見て、祈るように胸の前で手を合わせていた。娘を囲むように蝋燭がいくつも並んでいる。
 娘は閉じていた目をおもむろに目を開け、あなたを見た。心の奥まで見透かすような青い瞳に見つめられ、あなたは見てはいけないものを見てしまた気分になるかもしれない。
「この森で、生き物が殺められました」
 娘が言ているのは、狩人である自分のことに違いない。あなたは罪悪感に囚われるだろう。しかし、生きていくためには仕方がなかたのだ、と言い訳もする。
「ウサギが、キツネが、シカが、イノシシが、クマが、狩られました。ヒトも、狩られました」
……ヒト?」
 娘が挙げたものはいずれも、あなたは狩たことがあた。しかし、ヒトをめがけて矢を放たことはない。
「ヒトも。遠い昔から、この森へ逃げ込んだヒトが数多くいます。そのヒトと同じ数、あるいはそれ以上の数のヒトが、逃げたヒトを追て森に入り、そのヒトを狩りました。わたしはそれをずと見てきたのです」
 娘が立ち上がる。紺色のローブは足下を覆い隠す程長く、娘が座ている間は裾にでも隠れていたのか、リスや小鳥が姿を現し、その足に何匹も何羽もまとわりついた。
「これ以上わたしの森で命が失われるのを見たくはありません。だからもう森を閉じます。あなたはその前から森にいたため、迷てしまたのです。外へ送りましう」
「そ、そうか。それは助かる」
「ただし、約束をして下さい。あなたがこの森で殺めた生き物と同じ数だけの命を助ける、と」

 あなたは娘と約束をし、無事家へ帰り着けるだろう。
 しかし、約束は決して違えてはならない。もしも娘との約束を守らなかたら、あなたはあの森へ連れ戻され、永遠に彷徨うことになるだろう。
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