第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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自家製の果実酒(アイテムカード)
投稿時刻 : 2014.08.19 20:16
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自家製の果実酒(アイテムカード)
三和すい


 一日の狩りを終えた酔いどれペンギン剣士は、町の酒屋を訪れた。
「いらい。今日は珍しいお酒が入りましたよ」
 すかり顔なじみとなた店主が店の奥を指した。一抱えもある大瓶を満たす透明な液体。その中には肉の塊のようなものが浮いている。
「これは何だ?」
「蛇酒ですよ」
「蛇酒? 中にあるのは蛇の肉なのか?」
 普通は瓶の中に蛇を丸々一匹入れるものではないかと不思議に思ていると、
「何でも東国に山よりも大きな大蛇がいたそうで。しかも、その大蛇には頭が二つもあたとか。ある巫女によて退治され、その蛇の肉を切り分けて酒に漬けたのがこの蛇酒、という話です」
「ほう」
 本当かどうかはわからないが、味には興味がある。しかし、
…………
「? どうかしましたか」
「その、な。少しばかり持ち金がな」
 値札を見ると、コプ数杯分しか買えない。これではすぐに飲み終わてしまう。
 この貴重で高い酒を少しだけ買うか、それとも別の店で安い酒をたくさん買て心ゆくまで飲むか。蛇酒の前で迷ていると、
「たくさん飲みたいのなら、自分で作てみますか?」
「作る?」
「果実酒なら簡単ですよ。瓶と蒸留酒と砂糖はうちで売ていますし、あとは好きな果物を買えば、ペンギンさんにも作れますよ」
 それではこの酒屋の売り上げが減るのではと心配になた時、店主はニコリと笑た。
「その代わり、浮いたお金でうちのお酒を買てくださいね」

 酔いどれペンギンは店で一番大きな瓶を買て帰ると、宿の部屋でさそく果実酒を作り始めた。酒屋の店主に教えてもらたとおりの手順で梅の実を漬ける。
「あとは出来上がるのを待つだけか」
 ペンギンである自分の体がすぽりと入りそうなほどの大瓶をうとりと見つめる。三月ほど経てば、こんなにもたくさんの梅酒を飲むことができるのだ。
 出来上がりを想像すると胸が躍る酔いどれペンギン剣士であたが、はて、と首をかしげた。
 自分は旅人だ。とあるサーカスにいる踊り子と再会するために、各地を渡り歩いている。
 しかし、この果実酒が入た大きな瓶を持て旅を続けることなどできない。
 さて、我はどうするべきか。
 酔いどれペンギン剣士は大きな瓶を目の前に悩み始めた。



【効果】
 酒好きキラのカードの攻撃力と回避力を2倍(酔いどれペンギン剣士の場合は5倍)にしてくれる。ただし、効果が現れるのはカードを使用してから3ターン後。それまで、その場から動くことはできない。
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