てきすとぽい
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第26回 てきすとぽい杯
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放課後の屋上で
(
ra-san(ラーさん)
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投稿時刻 : 2015.04.11 23:32
字数 : 607
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放課後の屋上で
ra-san(ラーさん)
放課後の屋上で、いつも彼女は煙草を吸
っ
て待
っ
ていた。
「やあ、少年」
斜陽に白衣を赤く染め、彼女は片手を上げて僕を迎える。
「少年はやめて下さいよ、先生」
彼女が僕の顔に煙草の息を吹きかける。僕がむせると彼女は笑
っ
た。
「いじめですよ、それ」
「愛だよ、少年」
僕の抗議を煙に巻いて、彼女は沈んでいく太陽に目をむける。
赤焼けの空に滲むように太陽は潰れていき、夜がじんわりとその腕を広げていく。
「愛
っ
てなんなんですかね」
僕がぽつりと呟くようにそう聞くと、彼女は煙草の火を消して、吸い殻を缶コー
ヒー
の空き缶にぽとりと落とす。そしてぽつりと呟くようにこう返した。
「足りないものさ」
僕が怪訝な顔をすると、彼女は夕日にむかい両手を広げた。
「ああ、足りない、足りない! このやさしい夕射しのように愛はそこに見えているのに、どうしてこんなに足りないのか! みんなこうしてすり抜けて、なにもあたしには残らない。たとえ地球百個分の愛があ
っ
ても、あたしは満たされたりなんかできない!」
芝居がか
っ
た口調で彼女が叫ぶ。僕はコー
ヒー
の空き缶を逆さに振
っ
て、吸い殻を取り出すと、それを口にくわえてみた。苦い味が口に広がる。顔をしかめながらそれでも僕は彼女に聞いてみた。
「僕じ
ゃ
足りませんか?」
目を丸くした彼女は、やがてにやりと笑うと、僕の口から吸い殻を取り上げてこう言
っ
た。
「あと五年」
日没。
彼女が僕の額にキスをした。
これは地球何個分なんだろうと、僕は思
っ
た。
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