第26回 てきすとぽい杯
 1  6  7 «〔 作品8 〕» 9  13 
地球儀一個分の冒険
投稿時刻 : 2015.04.11 23:39
字数 : 1000
5
投票しない
地球儀一個分の冒険
三和すい


「本当に一人で大丈夫?」
 心配顔の母さんに、僕は「うん!」と元気よく答えた。
「でも……
 不安げな母さんに父さんが言う。
「タケシはもう小学四年生だ。夏休みの一月くらい、お前の実家で過ごすくらい大丈夫さ。それにお義父さんだてタケシが来るて楽しみにしていたぞ」
「そうだけど……
「大丈夫だよ! ちんと宿題もちんとやる。だから、お願い! おじいちんの家に行かせて!」
 僕の言葉に、母さんは渋々うなずいた。
 こうして僕は夏休みの一月間、おじいちんと一緒に過ごすことになた。
「お願いだから、危ないことはしないでね」
 と、母さんに釘を刺されたけど。

 おじいちんの家には、お父さんが車で送てくれた。
「タケシ、良い子にしているんだぞ。すみませんが、お義父さん、タケシのことをよろしくお願いします」
 そう言て帰て行たお父さんを見送ると、僕とおじいちんは顔を見合わせ、ニと笑た。
「タケシ、準備は大丈夫か?」
「もちろんバチリだよ!」
 僕は大きなカバンの中からリクサクを取り出した。小さいけど、旅に必要な荷物は全部この中に入ている。
「おじいちんは?」
「そり、ぬかりないさ」
 おじいちんは玄関から入てすぐの戸を開けた。部屋の中には、同じくリクサクやマントなど、旅に必要な物がそろえられている。
 僕たちは急いで着替えると、家の戸締まりをし、荷物を持て居間に集また。
 おじいちんは居間の飾り棚から古ぼけた地球儀を取り出した。
 そこにあるのは、古ぼけた地球儀だ。
 よく見ると、学校の地図帳に載ているのと大陸の形や場所が大きく違ている。
 ここに描かれているのが異世界の地図だと知ているのは、僕とおじいちんと、あとは母さんだけだ。
 そして、これがただの地球儀でないことを知ているのも。
「ねえ、おじいちん。今回はどこに行くの?」
「そうさな。まずはキガ大陸の西がいいかのう。ちうど珍しい渡り鳥が来る頃だ」
「珍しい鳥て、どんな鳥なの?」
「それは見てのお楽しみだ。では、行くぞ」
 僕はおじいちんの手をしかりと握た。おじいちんも僕の手をしかりと握り返す。
 おじいちんが呪文を唱えると、地球儀が淡く光り出す。
「いざ、キガ大陸の西、シランゼの町へ!」
 おじいちんが指先が地球儀に触れる。
 すると、僕たちの体も光に包まれ、ふわりと浮き上がる。
 
 地球儀一個分の異世界が、僕とおじいちんを待ている。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない