地球儀一個分の冒険
「本当に一人で大丈夫?」
心配顔の母さんに、僕は「うん!」と元気よく答えた。
「でも
……」
不安げな母さんに父さんが言う。
「タケシはもう小学四年生だ。夏休みの一
ヶ月くらい、お前の実家で過ごすくらい大丈夫さ。それにお義父さんだってタケシが来るって楽しみにしていたぞ」
「そうだけど……」
「大丈夫だよ! ちゃんと宿題もちゃんとやる。だから、お願い! おじいちゃんの家に行かせて!」
僕の言葉に、母さんは渋々うなずいた。
こうして僕は夏休みの一ヶ月間、おじいちゃんと一緒に過ごすことになった。
「お願いだから、危ないことはしないでね」
と、母さんに釘を刺されたけど。
おじいちゃんの家には、お父さんが車で送ってくれた。
「タケシ、良い子にしているんだぞ。すみませんが、お義父さん、タケシのことをよろしくお願いします」
そう言って帰って行ったお父さんを見送ると、僕とおじいちゃんは顔を見合わせ、ニッと笑った。
「タケシ、準備は大丈夫か?」
「もちろんバッチリだよ!」
僕は大きなカバンの中からリュックサックを取り出した。小さいけど、旅に必要な荷物は全部この中に入っている。
「おじいちゃんは?」
「そりゃ、ぬかりないさ」
おじいちゃんは玄関から入ってすぐの戸を開けた。部屋の中には、同じくリュックサックやマントなど、旅に必要な物がそろえられている。
僕たちは急いで着替えると、家の戸締まりをし、荷物を持って居間に集まった。
おじいちゃんは居間の飾り棚から古ぼけた地球儀を取り出した。
そこにあるのは、古ぼけた地球儀だ。
よく見ると、学校の地図帳に載っているのと大陸の形や場所が大きく違っている。
ここに描かれているのが異世界の地図だと知っているのは、僕とおじいちゃんと、あとは母さんだけだ。
そして、これがただの地球儀でないことを知っているのも。
「ねえ、おじいちゃん。今回はどこに行くの?」
「そうさなぁ。まずはキガ大陸の西がいいかのう。ちょうど珍しい渡り鳥が来る頃だ」
「珍しい鳥って、どんな鳥なの?」
「それは見てのお楽しみだ。では、行くぞ」
僕はおじいちゃんの手をしっかりと握った。おじいちゃんも僕の手をしっかりと握り返す。
おじいちゃんが呪文を唱えると、地球儀が淡く光り出す。
「いざ、キガ大陸の西、シュランゼの町へ!」
おじいちゃんが指先が地球儀に触れる。
すると、僕たちの体も光に包まれ、ふわりと浮き上がる。
地球儀一個分の異世界が、僕とおじいちゃんを待っている。