第27回 てきすとぽい杯
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誰かバリカン持ってこい!
投稿時刻 : 2015.06.20 23:26
字数 : 440
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誰かバリカン持ってこい!
ra-san(ラーさん)


 クソ暑いギラギラの太陽の下で、俺たちは負けた。
 高校野球予選の二回戦、クジ運悪くぶつかたシード校相手に玉砕した俺たちは、学校に帰りつくと、誰ともなしにグラウンドに仰向けに転がて、そんな太陽を見上げた。
「負けたな」
 隣に転がた小林が言う。
「負けた」
 俺がうなずくと、小林は起き上がり、俺の野球帽を脱がした。
 帽子の下から、およそ野球部らしくないツンツンにハードワクスで立たせた髪が出てくる。
「負けたから、その水濡れ厳禁の頭も坊主だな」
 小林が俺の髪をつつく。俺は立ち上がり、無言で手洗い場にむかた。
 蛇口を開き、頭を突込む。
 水に叩かれた髪が飛沫を上げてしな垂れていく。
「うがあ!」
 俺は叫びながら頭をぐしぐしにした。
「田中がさけんでやがるぞ!」
「誰かバリカン持てこい!」
 水の音の中にそんな声が聞こえたと思たら、誰かに頭を掴まれた。
「手伝てやる」
 小林の声。
「うがあ!」
「うお!」
 二人で頭をぐしぐしにする。
 クソ暑い太陽は、まだギラギラと輝いている。
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