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第28回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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そろばん
 投稿時刻 : 2015.08.16 04:18
 字数 : 1008
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そろばん
ひこ・ひこたろう


 数学が苦手なので大学は文系の商学部に入たのだが、大学の講義はつまらなく感じた。たとえば簿記の仕訳。「切手を50円現金で買た」場合、「(借方)通信費 50円/(貸方)現金 50円」などと記述するのだが、こんなの高い授業料を払てまで勉強することだろうか。会計の処理などアプリケーンソフトを使えばいいのに。文句を言うくらいなら、わざわざ商学部にしなくてもよかろうに、という声も聞く。もともな意見だ。そもそもなぜ僕が商学部を選んだのかと言えば、小学校の時そろばんを習ていて、暗算も結構得意だたため、それが役に立つのではないかと考えたからだ。今となてあさはかな動機でしかない。
 数学は苦手と言たが、物理はともかく化学や生物は好きで、しかも得意な方だた。そのため僕は退屈な大学での勉強とは別に色々な理科系の資格を取得することにした。危険物乙4とかは楽勝だたし、ガソリンスタンドでのバイトでも優遇された。調子に乗て甲種まで取た。消火しようとして水をかけると逆に爆発してしまう物質もあることを知た。公害防止管理者も環境問題の理解を促進させた。そして放射線取扱主任者にまで手を染めたのだが、これは結構手ごわかた。微分積分の知識が不可欠だたし、計算問題も難しい。公害防止管理者とは違て、試験での電卓の使用は不可。
 しかし、そんなことでひるむような僕ではない。自分にはそろばんの知識がある。電卓がなくてもそろばんがあれば鬼に金棒だ。「そろばんの持ち込みは許されているのか?」などという愚問はやめていただきたい。許されるわけなどないではないか。じあ、どうすればいいか。そう、紙にそろばんの絵を描けばいいのである。ある程度まで暗算でできるので、適当にそろばんの絵を描いて、玉の動きを矢印で示したり、チクをつけたり、鉛筆で塗り潰したりすることで、「紙の上でのそろばん」を使て自在に計算できるのである。僕はもはや「紙そろばんマスター」とでも言うべき、その方面の達人と化してしまたようである。
 そして、試験の日がやて来た。計算問題を後回しにし、次々と問題を解いていく。試験は択一式だ。解答用紙のマークシートを塗り潰しにかかる。しかし、どうしたことか。[※ここに挿絵]マークシートの記号がそろばんの玉にしか見えない。そろばんがやりたい、そろばんが僕を読んでいる。ああ、手が勝手に計算を始めてしまう。やめてくれえ!
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