時事ネタなようで時事ネタじゃない小説賞
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アイズ' ルーム
投稿時刻 : 2015.11.27 03:04 最終更新 : 2015.11.27 03:07
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- 2015/11/27 03:07:33
- 2015/11/27 03:06:55
- 2015/11/27 03:06:20
- 2015/11/27 03:05:36
- 2015/11/27 03:04:21
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      クローズド・アイズ

 女の子の放送が始まて数日が経過しました。
 画面の中で、女の子は日々、勉強をしたり絵を描いたり、一生懸命に何かに取り組んでいます。
 時折、その成果をわたしたちに見せてくれます。
 今日は、女の子の家族の絵でしうか。
 お父さんとお母さん。
 真ん中に笑顔の女の子。
 クレヨンと色鉛筆だけの拙い絵ではありましたが、わたしたちは、その絵に何かを考えさせられるような気持ちになります。
 右隅のあの数字は、日を追うごとに小さくなています。
 もう明らかでした。
 あの小さな数字は、わたしたちのテレビの隅についているカード・リーダーを通して番組にお金を支払た人の数なのです。
 支払いは1日につき1回有効で、夜の12時を過ぎると再びゼロになります。
 それから、あの数字の大きさによて食事の豪華さが変わることも、わたしたちはもう気付いていました。
 その意味の重さは、単なる視聴者に過ぎないわたしたちにとて、とても背負いきれるものではありません。
 みんながみんな、お金を払えるわけでもありませんし、この番組が“今後も続いた場合のこと”を考えると、あの数字が減ていくのも分かります。
 それに、この後の女の子のことを考えると、わたしたちはボタン1つで日常に戻るべきなのかもしれません。
 それは、仕方のないことでした。
 それは、仕方のないことです。
 それは、仕方のないことでしうか。
 わたしたちは、知らず知らずのうちに、見ない振りがうまくなりました。
 いいえ。
 見ない振りができる環境をうまく使えていないだけなのかもしれません。
 やがて、視聴者数全体はどんどん小さくなていき、やがてあの数字も以前と同じ、小さなものへと変わていたのです。
 そうして、タイムリミトが近付いてきたとき、やつれきた少女は画面の前に立つと、あの時と同じように口を動かしたのです――



ありがとう

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