時事ネタなようで時事ネタじゃない小説賞
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アイズ' ルーム
投稿時刻 : 2015.11.27 03:04 最終更新 : 2015.11.27 03:07
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- 2015/11/27 03:06:55
- 2015/11/27 03:06:20
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- 2015/11/27 03:04:21
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      アイズを見つめるアイズ

 あの放送は今でも続いているようです。
 不思議なことに、わたしたちはあの部屋が何なのか、おおよそ見当がついているのにも関わらず、放送は終了することなく、今日もまたボタン1つで誰かの存在を“値踏みする”ことができます。
 一体、誰があの部屋を放送しているのか。何故、誰も放送を止めないのか。
 それは、今となては分かりません。
 わたしたちは、もう日常に戻て来たのですから。
 いいえ。
 完全に日常に戻る前に、ひとつだけ。
 実は、ひとつだけ、わたしたちの認識に誤りがあたことを、わたしは知ています。
 それは、右隅の数字の1番上。
 視聴者数全体を表していると思ていた数字。
 真ん中の数字――お金を支払た人の数――がゼロでなかたとしても、一番上の数字がゼロになることがありました。
 これはつまり1番上の数字には、真ん中の数字は含まれていない、ということです。
 この意味を、わたしたちはよく考えた方が良いのかもしれません。


 この放送は有料放送です。
 しかし、お金を支払わなくても見ることができます。
 わたしたちは、都合よく“見ない振り”ができる環境にいます。
 ボタン1つで、わたしたちは誰かの部屋を見ることができて、見ないこともできます。
 考えることができて、考えないこともできます。
 助けることができて、助けないこともできます。


 そんな世界にわたしたちは生きているのです。
 そして、この世界こそが――


 『アイズ‘ ルーム』
 

(完)


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