てきすとぽい
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我ながらホレボレする文体を自慢する大賞
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ホステスの母+後日談
(
ひやとい
)
投稿時刻 : 2013.04.26 06:14
最終更新 : 2013.04.26 06:58
字数 : 3718
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2013/04/26 06:58:29
-
2013/04/26 06:14:23
ホステスの母+後日談
ひやとい
小学校の、ニ、三年位の頃。ど
っ
ちだ
っ
たかす
っ
かり忘れてしま
っ
たが、ある時担任の先生から、
「お母さん何の仕事しているの」
と言うような質問をされた。僕は当時から視力が悪く一番前の席順が定位置だ
っ
たので、彼も何の気なしにそんな質問をしてきたのだろう。両親が共働きという事もいつのまにか話していたらしい。
「キ
ャ
バレー
のホステス」
そう、子供だから正直に答えると、とたんに彼は困惑した表情にな
っ
て、それきり後は、それを話題にする事はなか
っ
た。
その当時僕の家は、細かい事情を両親からよく聞いていないから記憶があやふやなのだが、とにかく借金を背負
っ
ていて、よく色々な人が催促に来ていた。たまたま僕が対応した時は決ま
っ
て、
「今、お父さんもお母さんもいないんですけど」
と言うのが常だ
っ
た。別に言い訳じ
ゃ
なく、いつも何故かそういう時に、本当にいないのだ。そして必ず、来た人に託けを頼まれてしまうのだ
っ
た。僕は、例えば忘れん坊クラス1になるくらいに、あらゆるモノや事柄を忘れてしまう子供だ
っ
たので、そういう託けを聞いた事すら、あらかじめ約束されたかの如くに、当然さ
っ
ぱりと忘れるのだ
っ
た。あとでしま
っ
たと思い、かなり時間が経
っ
てから、両親にその事を言うのが常だ
っ
たが、しかし何故それで怒られた記憶はまるでない。多少はそんな事もあ
っ
たのかも知れないが、とにかく忘れる事にかけては周りからも定評のあ
っ
た僕だから、そんな事も忘れているのかも知れない。
普通一般家庭での借金と言えば、男親がギ
ャ
ンブルか女遊びでこしらえるとか、事業で失敗したとかなのだろうけど、家での借金はすべて母が作
っ
てくるものだ
っ
た。この時の借金を返し終わ
っ
た数年後に、母が小料理屋を開くのにまた大きく借りてしま
っ
た事があるので、おそらくその時も、何かの事業を起こして失敗したのだろうと思う。母は何故かそういう自分の居場所というか、自分の城みたいなものを家庭外に持ちたか
っ
たようなのだが、家計簿をつけているのも見た事がないくらいの、ドンブリ勘定の見本みたいな金銭感覚の持ち主だ
っ
たので、失敗するのも当たり前の事だ
っ
たのだ。当然簿記も知らず、小料理屋をしていた時も客の言うままにツケを許していた。よくそれについて言い訳もしていた。
そして酒も好きだ
っ
た。訳のわからない事を叫びながら家に帰
っ
てくるくらいになるまでよく飲んでいた。いわゆる酒乱なのだ。介抱する僕にと
っ
てはとても迷惑な事だ
っ
た。時には小便まで漏らして帰
っ
てきた。酒くさい小便の匂いに僕まで吐いてしまいそうにな
っ
た。そんな調子なので、いつのまにか僕の知らないうちに、自然と店は畳まれていた。母はその後よほど懲りたらしく、病院の付き添い婦に職を見つけると、以後体の不調が原因で辞職するまで十数年そこで働き続けることにな
っ
た。
そういう母の失敗の、後始末はどうするのかと言えば、全て父がその尻拭いをするのだ
っ
た。サラリー
マンの父は、母とは反対に細かい性格で、お金の計算もさることながら、例えばある時、家族の誰かが夜中にトイレに起きると次の朝に、「お前、昨日夜中の何時何分にトイレに行
っ
ただろう」等と必ず言
っ
たりした。父以外の僕ら家族は、微かな物音ですぐに目を覚ます父を「忍者」と呼んで笑
っ
たりしたのだ
っ
た。
そしてまたある時、僕には姉がいるのだが、その姉が、当時流行
っ
ていたデ
ィ
スコに通うために、父の財布から金を盗んでそのまま遊びに行
っ
た事がある。バツの悪い事に、僕もその時トイレに起きてしまい、う
っ
かりその現場を見てしま
っ
た。見られた姉は、驚いた顔をしながらも僕のほうを向いて、口に人差し指を当てて合図をした。姉は気性が荒く、逆らうと鼻血が出るほど殴
っ
てくるので、僕は当然黙
っ
てそのまま布団に戻り、寝る事にしたのだ
っ
た。
しかし、朝になると細かく財布のチ
ェ
ッ
クをする父にすぐ分か
っ
てしま
っ
たらしく、翌朝僕が起きてみると姉が居間で蹴飛ばされているのが見えた。姉が寝転びながら、所謂我が家でネコキ
ッ
クと呼んでいた、つまりネコの様に体を縮めながら折り曲げていた足で攻撃を防御するやり方で、父の力強く繰り出す蹴りに、ワケのわからない事を喚きながら必死に応戦していた。何故か今でも僕の頭には、その時の映像が、割に強く残
っ
ている。それにしても、姉がバレたのに、僕が何も怒られなか
っ
たのはどうしてなのかと、今にな
っ
て不思議に思うものだが。
そんな風に神経の細かい人だ
っ
たので、キ
ッ
チリと父は、母の杜撰さをカバー
していたのだ
っ
た。例えば当時の家は風呂無しのアパー
トだ
っ
たので、借金時には倹約のために、なかなか銭湯に行かせてもらえなか
っ
たりしていた。僕はバカ正直だ
っ
たから、学校でその事をう
っ
かり話してしまい、不潔男呼ばわりされてち
ょ
っ
としたイジメに発展したりした。どんな風にイジメられたかはあまり覚えていない。着ていく服もあまり買
っ
てもらえなか
っ
たし、母が昼間に寝ていて洗濯もあまりしてもらえなか
っ
たのもあ
っ
て、いつも同じ服を着ていたというのもあ
っ
たから、そういう方向に行
っ
たのかも知れない。それでもま
っ
たく友達がいないと言う事はなか
っ
たので、それなりに楽しか
っ
た記憶の方が強い。
そんな訳で、一度目の借金返済の足しにと言うことなのだと思うが、やむなくホステス勤めをしていた母だ
っ
た。
母がキ
ャ
バレー
に勤めていた時の事で思い出されるのは、毎月、給食費などの学校の費用を、夜は勤めでいないものだから、仕方なく朝に要求する時の事だ。僕が費用をねだると、母は寝床で「ウン
……
ウン
……
」というものだから、了解を得たとばかりに、母のカバンから費用を取
っ
て学校に行き、そして課業が終わ
っ
た後、家に帰ると決ま
っ
て怒られていたのだ
っ
た。「朝は寝てるんだから、なんでもウンウン言
っ
ち
ゃ
うんだよ! 朝にそんな事言うな!」と必ず、決まり文句を聞かされたものだ。
父に出してもらえばいいのだが、子供だからかその事を言
っ
ても誤魔化されてしま
っ
て費用を出してくれないので、仕方がなか
っ
たのだ
っ
た。もちろん怒られると分か
っ
てはいたが、出さないと先生にも怒られるので、僕はいつも、朝眠
っ
ている時を狙
っ
てそれを繰り返した。例え母に怒られても、払わなければならないのは当人もわか
っ
ていたので、そんなに強く言えない事も知
っ
ていたのだ。
そんなわずかな給食費もケチるくらい、僕の家は逼迫していた。要するにそれだけの事だ
っ
たのだ。
大人にな
っ
ても、たまにその事を思い返す。その時担任の先生が僕の言う事に対して、そんな風に口をつぐんだのが、今でも気持ちの良くない、どんよりと嫌な感じで心の中に残
っ
ている。僕はそういう時、まあ所詮はセンセイ
っ
て程度の人なんだろうな、と思い直し、わずかな怒りを納めている。母は、確かにどうにもならない人ではあるのだが、それなりに真面目に一生懸命生きていたのだと思うから、つい怒
っ
てしまうのだ
っ
た。その生き様自体は別に恥ではないとも、強く思う。もちろん、決して威張
っ
て言える事ではないのだが。
それともうひとつ、不思議に思う事がある。母は、実はとても不細工で、女としての器量はどうにもならないと、兄弟の意見が一致する程なのだが、その母が何故、よりにもよ
っ
てホステスなんかや
っ
たのだろうか、と。
まあそんな事くらいは、母に聞いてみればいいのかも知れない。も
っ
とも、とても怖くて、僕からは聞けないのだが。
後日談。
これを書いてからもう11年経
っ
た去年、妹が大病にかか
っ
たと聞き、会えなくなるかもしれないと恐怖にかられ、あわてて帰省した。
妹は二人いて、そのうちの上の方が大病にかか
っ
てしま
っ
た。
一週間滞在し、兄弟全員や甥と会
っ
ていろんな話を聞いた。幸運なことに姪はいない。
全員で実家に集ま
っ
て、ジンギスカンをつつきながらの話もした。
しかしそこに、母はいなか
っ
た。
妹が大病にかか
っ
たと同時期、母は帰省直前の夜、飲み歩こうと外に出たら雪道の凍
っ
たところに足を滑らせ骨折し、妹とは別の病院に入院していたのだ
っ
た。
父と見舞いに行くと、母はこちらの顔を見るなり、はあー
とのんきな声を出しながら、テレビをつけてベ
ッ
ドに横たわ
っ
ていた。
そしていろいろと積もる話しをした。
その時父が、
「アレが重病にかか
っ
たせいでみんなあ
っ
ちば
っ
かり心配して、母ち
ゃ
んのこと心配しないから、ふてくされてるんだ」
と、笑いながら話した。
それを聞いた母はわざと口を開けとぼけた顔をしてから、あとはしらんふりをしていた。
らしいなと思
っ
た。
東京戻
っ
たあと電話で連絡しながら様子を伺
っ
たが、妹の大病は快方に向かい、母もほどなく退院したので、ひとまず安心している。
歳をと
っ
て足を悪くすると歩かなくなり、結果ボケやすくなるというので、電話をするたび「早く死んで俺に金くれ」とか「歩かないでボケたら川に投げ捨てる」などと言
っ
ている。なぜかというと、そういうことを言えばき
っ
と反対のことをするだろうと、体験上わか