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袖擦り合うも
(
白取よしひと
)
投稿時刻 : 2016.08.01 00:55
最終更新 : 2016.08.01 01:31
字数 : 1000
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2016/08/01 01:31:06
-
2016/08/01 00:55:39
袖触れ合うも
白取よしひと
しかしあれだな
ぁ
。こうや
っ
て流行りの喫茶店でウインナー
コー
ヒー
なんて啜
っ
てると贅沢な気分ですね
ぇ
。
ほら、ちんちん電車がや
っ
て来ましたよ。東京もオリンピ
ッ
クの前と後じ
ゃ
大違いだ。何しろ街の活気が違いますや。脛出したおなご衆が歩いて来やしたでし
ょ
う。そんなご時世ですよ。
「あ!どうぞどうぞ。あ
っ
しは気にしませんよ。ご遠慮なく」
「これですかい?ウ
ィ
ンナー
コー
ヒー
っ
てしろもんですよ。なかなかハイカラでやし
ょ
」
「ほ
ぉ
。そちらさんがこれ。うん。お嬢さんはソー
ダ水だね」
あり
ゃ
あり
ゃ
。こり
ゃ
大変な混み様だ。なかなか女給に声も掛けられやしね
ぇ
。お
っ
と、昨今ウ
ェ
イトレス
っ
てのが呼び名らしいや。何でもかんでもアメリカさんの言葉にする
っ
てのもどうなのかね
ぇ
。おいおい。ここで呼んでるんだよ。お二人さんがご注文だ。
「あれ。どうしたんですかい?お嬢さん随分元気がない様だが」
「あ
ぁ
成程。人間関係
っ
てのが一番厄介だね
ぇ
」
「気に病んでるお嬢さんに言うのは酷なようだが。この世の中そんな思い通りに
ゃ
行きませんよ」
おお。優しい兄さんだ。全くお似合いのお二人さんだね
ぇ
。
「お二人さん。漱石先生の草枕
っ
て読んだ事あるかい?」
「そうそう。智に働けば何とかさ
っ
て奴さ。御大層な先生でも悩む事はあるんだ。気にしね
ぇ
事だよ」
「そうですかい。兄さんは新聞社にお勤めですかい」
「いやいや。活字拾う
っ
てのは大変な仕事だ。お体大事にしておくんなさいよ」
「あ
っ
しですかい?とんでもない。三歩歩けば明日に憂い、振り返れば後悔ばかりの人生でさ
ぁ
」
「ですがね」
そう急かされてもね
ぇ
。人さまに偉そうな口叩くのは大の苦手でね。仕方ね
ぇ
な。
「あ
っ
しはね。急がず、焦らず、妬まず、いつも笑
っ
ていて。そう晴れ間のお天道さんみたいな男になりたいと常々思
っ
てやすよ」
「何か聞いた事ある?ち
ょ
っ
とばかり宮沢の賢ち
ゃ
んのを拝借してますがね」
はははははははは。若いお人と話してると楽しくて仕方ね
ぇ
や。ほらお嬢さん。あんまり笑うと折角仕上げた化粧が流れやすぜ。はははははは。
「おや時間がない?そうですかい。これから活動、いや映画だね」
「それはいいや。急いだ方がいい」
「いやいや、それは置いたままで。勘定はあ
っ
しがもちますよ」
いいもんだね
ぇ
。若い
っ
て。あ
っ
しもあと二十若けり
ゃ
活動に時化こむのも悪かね
ぇ
。
「え?相席ですかい。あ
っ
しは構わないですよ」
さてさて。また笑わせて貰いますか。
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