本スレより全感想転載
「投稿された作品を用いての教授をしたらどうなるのか」という観点で批評をしてみます。
「別にそんなこと必要ない」「エンタメを書くために書き下ろしたのだ」とおっしゃる方には、意味のない感想かと思います。お目汚し申し訳ありません。
若干辛口です。
No1 救世主(茶屋)
http://text-poi.net/vote/123/1/
「テーマ」は、「信じてた人から受ける裏切り。そのおかげでより自分の信念で行動できる」
クライマックスは64行目「違う、これは……」
変わったことは「主人公の『うちゅうじん退治』に対する気持ちの持ちよう」である。
変わったことによって、「主人公はさらに『うじゅうじん退治』を行うであろう」である。
変わった理由は、「信じてた彼が『うちゅうじん』の仲間だった」である。
○裏切りを描写したいなら、クライマックスに『うちゅうじん』を含めるのはどうかと。
『うちゅうじん』は物語のテイストであり、中核ではない。クライマックスに置いてしまっては物語がブレます。
『うちゅうじん』を中核にしたいのなら、まずテーマを宇宙人特有な何かにしなければ、読者にすとんと落ちないのでは。
○お題の捌き方は「とりあえずぶっこんだ」という感じ。
No2 海が聞こえない(古川遥人)
http://text-poi.net/vote/123/2/
「テーマ」は、「あの日みた彼女の姿を今でも思う。だから一歩も進むことができない」
クライマックスは237行目「こらこら、五年ぶりの再会にどんなボケかましてんの」
変わったことは「鳴海の肯定ではなく、『昔の鳴海の肯定』」である。
変わったことによって、「主人公は今もなお昔の鳴海を思い続け」ている。
変わった理由は、「今の鳴海に逢って、考え方や生き方に共感できなかったから」である。
○もしテーマが読み取った通りなら、上手に書けている作品だと思います。
ただ、長い。そのことを書くにあたって、テーマには関係ない部分がたくさんあるような気がします。
それを必要とするなら、(物語の書き方として)時代背景に食い込ませるか、兄との軋轢に鳴海を関わらせるか、プールでの出来事を現代に引きずるか、どちらにせよ意味のあるものにしないと「机の上の宝物=拾った石」になってしまいます。つまり、描写した文章の数々は拾った石ころで終わってしまうと思います。
○お題の捌き方はテーマに絡めて「思い出」として消化していて好感触でした。
No3 ぼくは友達がほしい((仮))
http://text-poi.net/vote/123/3/
「テーマ」は、「気に入らない同級生に仕返しすると、何もかもうまくいく」
クライマックスは258行目「ぼくはそれをダイキ君の顔に向かって噴射した」
変わったことは「ダイキ君を抹消したことにより、主人公が生きやすい環境になった」である。
変わったことによって、「主人公の学業も上手くいき、家庭も上手くいった」である。
変わった理由は、「主人公は『神様』という超次元的な存在と慣れ親しんでおり、環境を変えるキッカケを掴むことができた」である。
○作者さんがこういう意図で作品を書いたかどうかは定かではありません。
ですが、もしそうだとしたなら、たぶん、読み取ったもの以上でも以下でもないと思います。私にはそれ以上のものを読み取ることはできませんでした。
○お題の捌き方は「とりあえあずぶっこんだ」という感じ。
No4 夏のベリー(大沢愛)
http://text-poi.net/vote/123/4/
「テーマ」は、「制汗スプレーのにおいを思う。それはつまるところ、スプレーのにおいをつける誰かを思う」
クライマックスは下から10行目「そういう感じなんだろ」
変わったことは「女の匂い=制汗スプレーのにおい。が、制汗スプレーのにおいをつける女=かわいいと思い直すこと」である。
変わったことによって、「制汗スプレーを吹き付ける人によって、スプレーは意味を成すということがわかった」である。
変わった理由は「制汗スプレーを吹き付けた姉に抱きしめられたことによって主人公の意識が変わった」である。
○書いていて、下から七行目>「言いたいことはわかるけれど」がわからない。
それはたぶん、主人公に感情移入して読み込んでいたから、急に現れた姉の考えを読み取ることができなかったからだと思います。
制汗スプレーを吹き付け、主人公(弟)を抱きしめた姉は、主人公に何を伝えたかったのか。(作者様に明確なメッセージがあるのであれば)これを受け取れる読者とそうでない読者で、評価は分かれる気がします。私は受け取れませんでした。
わかったらよい作品と思うのかもしれません。
○お題の捌き方は「そのものについてズバリ書いた」という感じ。
――総評――
作品を投稿するつもりでしたができませんでした。次回は参加しようと考えています。
今回の感想は、たくさんあるうちの一つの小説(特に物語小説)の読み取り方と思ってください。(私小説や歴史小説では、こんな読み取り方をしたのでは、重要な文章も読み落としてしまうものですから)
物語序盤と終盤の変化(クライマックス)を通してテーマを読み取らせるのが基本となっている昨今、変化自体を投げ捨て、序盤の設定を終盤で強調するいわゆる「離陸」作品はとても書きやすいと感じます。(やっぱりそうだった。だから俺は一人でいる。という結びで終わる作品など)今回では『No.2 海が聞こえない』がそうでしょうか。
だから悪いという意味ではなく、離陸作品は往々にしてオチが光らない作品と呼ばれています。だからこそ作者の腕が光る「テーマを絡めた中盤」が良かった作品だと感じました。
小説はすべての文章が意味を持つといいます。それは、すべての文章が「テーマ」を強調する文章になっているという意味だと思います。
そういう意味では、『No.4 夏のベリー』は作品全体を通して物語の世界観や雰囲気を上手に作り出していると感じました。ただ、私には何を伝えたいのかわかりませんでした。
『No.1 救世主』や『No.3 ぼくは友達がほしい』は、クライマックスは容易しているが、それによって主人公の変わったことが書きたいであろうテーマと乖離しているような気がしました。
偉そうにすいません。どれも長文で作品を書き上げるエネルギーがすごいと思いました。作者様方、運営の方お疲れ様でした。次回を楽しみにしています。