ひとりぼっちの狼
狼はひとりで森に暮らしていました。
ときには腹を減らし、ときには罠にかかりそうになり、じぶんはどうしてひとりなんだろうと考えることもありました。
けれど狼は気ままに暮らしていました。すきなときに寝て、すきなときに遊ぶ。狼は、さみしいとおもうとこはありませんでした。
ある日、狼は森の中でひとりのおんなのこを見つけました。
赤いずきんをかぶ
っています。
「あのこもひとりぼっちなんだろうか」
花を摘みたのしそうにする赤ずきんのおんなのこを見かけて、そのときはじめて狼は「ともだちがほしい」とおもうようになりました。
あくる日もあくる日も、森へやってきてはひとりであそぶおんなのこを見ていた狼は、おんなのこがひとりでさみしがっているのかもしれないとおもうようになりました。
「よし、それならぼくがともだちになってあげよう」
狼はそれからもただおんなのこを見つめていましたが、ある日彼女が手提げのかごを持って歩くのを見て、ついていくことにしました。
「そうか、おんなのこにはおばあさんがいたのか。じゃあおんなのこをびっくりさせて、ともだちになるきっかけにしよう」
狼はおばあさんの家まで先回りして、おんなのこを迎える準備をしました。
おばあさんの服を着て、おばあさんのめがねをかけて、するりとベッドにもぐりこみました。
さあ、いよいよおんなのこがやってきます。
けれど、狼のゆめはかないませんでした。
おばあさんに助けを求められた猟師が、おんなのこよりも先にやってきたのです。
狼はながい眠りにつきました。
おんなのこに花冠をつくってもらい、いっしょに笑う夢をみながら、はじめてのともだちといつまでもたのしく暮らしましたとさ。