第48回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・白〉
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永久就職
(こなた)
投稿時刻 : 2018.12.15 23:49
字数 : 922
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永久就職
こなた


 今日も疲れた。
 鉛のように重い体をなんとか動かしながらアパートのドアを開ける。
 就職を機に上京し、第一志望の仕事そして初の一人暮らしに心弾ませていたのはほんの一瞬で、三カ月もたたぬうちに激務と孤独ですっかり参っていた。

 味のしないカップラーメンを啜り、ノートパソコンを鞄から取り出す。明日までに書類を書き上げねばならないのだ。明日?いや、今日だ。数時間後にはもう俺は職場にいるのだ。
 溜息をひとつ吐き、パソコンを開く。黒い画面には俺の顔。と、もうひとり男の顔が映っている。勢いよく閉める。開く。やはりいる。
 バッ、と後ろを見る。誰もいない。俺はパソコンの電源をいれた。画面が光って、俺の顔も男の顔も消える。疲れているせいだ。

「もう、やめてしまいましょうよ」

 陰鬱な男の声。風呂の中で喋っているような妙な響き。

「毎日、遅くにしわくちゃのスーツで帰ってきて、twitterに仕事や上司の愚痴なんか書き込んでいて。生きてて楽しくないでしょう。それに比べて、死者はいいですよ」

 声こそ気味の悪いひどく沈んだ声だったが、嫌な上司もいないこと、午前0時から3時までの一日3時間勤務で休みは自由にとれること、ノルマもないことをとつとつと語りかけてきた。
 ああ、そいつはなんていい職業なんだ。

「就職試験は少し勇気がいりますが、簡単です」

 風呂場で湯を溜め、その間に先日精神科でもらってきた睡眠薬をシートからひとつひとつ外していく。パキ、パキという音がなんだか落ち着く。折角だから酒で飲もう。鼻歌を歌いながら冷蔵庫に向かう。
 さっきまでの疲れが嘘のようだ。

 その時、スマホが振動した。ディスプレイを見ると親友からの着信。俺はスピーカーモードで応答した。酒を飲みながら話をしようと思ったからだ。

「あああああぁぁぁぁぁ」

 親友の何やら日本語ともつかない言葉によって、俺の後ろの奴は叫び声をあげて、それっきり。
 そういえば、こいつって寺生まれで除霊とかできたんだっけか。

「あー……もしもし、おまえのせいで俺超ホワイト企業に就職しそこなったわ」
「ザマミロ。どうせしょーもねー仕事だろ。それよりこっち帰ってきてオレの仕事手伝ってくれや」

 くだらない話で一晩中盛り上がりながら、俺は退職届を書き上げた。
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