てきすとぽい
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第59回 てきすとぽい杯
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金木犀
(
すずはら なずな
)
投稿時刻 : 2020.10.17 23:28
最終更新 : 2020.10.17 23:39
字数 : 546
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2020/10/17 23:39:35
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2020/10/17 23:32:20
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2020/10/17 23:28:01
金木犀
すずはら なずな
窓を開けると花の香が漂
っ
てきた。あれは金木犀。
夜になると余計に匂いがわかるのね。
耳を澄ますと隣のTVの音 向かいの給湯器の音 遠くで走る電車の音。こんなに音がするのに 静かだ
っ
て思うの、不思議だね。
話しかけても、キジトラの仔猫は 今日出した毛布の上で丸くな
っ
て寝ていて、ぴくりともしない。安らかな寝顔。
夜の闇と明るい黄色の月を見ていると、実家に残して来た年寄りの黒猫のことを思い出す。手を差し出すとすぐに舐めてくれた優しい子。
最初、トイレの芳香剤のかおりだ
っ
て、言
っ
たのは 彼。
おかしいね。逆だよ、それ、
っ
て 笑
っ
て言
っ
てもき
ょ
とんとした。花の名前なんてよく知
っ
てるね
っ
て 真顔で言われた。
「今時の子は」、なんて思
っ
てしま
っ
た、ち
ょ
っ
と年下なだけなのに。重なる小さな違いが気にな
っ
て、逢わない方がいいのかな、付き合うなんて無理だよね、そう思
っ
てしま
っ
た
っ
け。
「紗良ち
ゃ
んの好きなキンモクセイの季節だな」
石鹸の香がふわ
っ
として 後ろに風呂上りの夫がいる。
「最初、トイレの芳香剤
っ
て言
っ
たくせに」
「そんなこと言
っ
た
っ
け」
缶ビー
ルのプルタブを開ける音。
「寒くな
っ
たね」
「いや、夜風が心地いい。ビー
ルも旨い」
仔猫がう
っ
すら目を開ける。
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