てきすとぽい
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第11回 てきすとぽい杯〈お題合案〉
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ライフログハックな彼女たち
(
犬子蓮木
)
投稿時刻 : 2013.11.16 23:29
最終更新 : 2013.11.16 23:31
字数 : 2248
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2013/11/16 23:31:36
-
2013/11/16 23:29:50
ライフログハックな彼女たち
犬子蓮木
『林檎は嫌いじ
ゃ
なか
っ
たんですか?』
リビングでこたつに入
っ
てケー
タイを見るとツイ
ッ
ター
でそんな言葉が飛んできた。わたしはなんでそんなことを言われるのかがわからない。『なんで?』と聞き返してみると、その言葉を送信してきた相手は、わたしが林檎を嫌いだと思
っ
ていたということだ
っ
た。たまたまテレビを見ていてわたしが林檎について、おいしそう
っ
てツイー
トしたから、気にな
っ
たらしい。
『別に林檎は好きだけど』
『でもブログにすごい嫌い
っ
て書いてあ
っ
たような』
わたしはもう五年ぐらいブログを書いている。相手はそんなわたしのブログの読者だ
っ
た。たくさんあるし、なにか勘違いでもしているんだろうか。他の誰かのブログと間違えているのかもしれない。
「テレビかえていい?」
リビングに現れたお姉ち
ゃ
んが言
っ
た。ち
ょ
っ
と冷たい感じだけど綺麗なお姉ち
ゃ
んで大好きだ
っ
た。
「いいよ。わたし部屋戻るし」
「そう」
お姉ち
ゃ
んがチ
ャ
ンネルを変える。
わたしは、じ
ゃ
あね、と部屋に戻
っ
た。
部屋の明かりをつけて、机に座
っ
た。ノー
トパソコンのふたを開いて、スタンバイから復帰するのを待つ。一応、確認したか
っ
た。もしかしたら昔、嫌いとか書いたのかもしれない。
思うことなんて、たびたび変わるし、なにかそういう気分のときもあ
っ
たかもしれない。さほど問題がなければそれだ
っ
て成長とかかもしれないからそのままで良いと思うけど、あまり悪い書き方なら直したほうがいいかなと思
っ
た。修正ではなく、追記とかでもいいし。それに気にな
っ
ていることもあ
っ
た。
ブログを開いて検索欄にキー
ワー
ドを入れる。
記事がひ
っ
かか
っ
た。ひとつだけ。そのエントリを開いて読む。
『林檎は大嫌い。ぐし
ゅ
ぐし
ゅ
した感じがイヤだし、なんか安
っ
ぽいよね。梨は好きかな』
確かにそう書いてあ
っ
た。だけど、記憶はない。なんだろう、そんなイヤなことがあ
っ
た旅行だ
っ
た
っ
け。わたしはし
ょ
うがないので追記した。一回も嫌いにな
っ
た覚えはないけど、『今は好きです』と。
それからツイ
ッ
ター
で教えてくれた人にも返事をする。あやま
っ
て、昔はそう書いててみたいだけど直しましたと伝えた。
椅子の背もたれに体重をかけて、首をまげて天井を見る。男性アイドルのポスター
が貼
っ
てあ
っ
た。ず
っ
と好きなんだ。
それにしてもなんだろう、最近、こうい
っ
たことが多か
っ
た。ブログを読んでくれた人と話したときに、『
〜
ですよね』と言われても『???』と答えに困
っ
てテキトー
に返したりしている。確かにブログを確認するとそう書いてあるので、わたしが昔、そう思
っ
たのだろうと考えていた。
でも、林檎を嫌いにな
っ
た覚えなんてない。そのとき『この林檎まずい』となることならあるだろうけど、それ自体を嫌いになる
っ
ておかしくない?
わたしは他のエントリも見ていくことにした。振り返
っ
て読むのは嫌いではない。懐かしか
っ
たり、ああ、そんなこともあ
っ
たなー
と楽しめるから。
だけど、今、目の前に出てきたものはそんな風に楽しめるものではなか
っ
た。
『彼氏と別れました。あいつ浮気して最悪。名前晒すのでみなさん気をつけてください』
そんなことを書いた覚えがない。
『幾星霜のときを乗り越えて、ついに買
っ
ち
ゃ
いましたよあの本』
そんなもの買
っ
た覚えがない。
『大好きなお姉ち
ゃ
んと旅行にいきましたー
』
お姉ち
ゃ
んと旅行? いつ? そのときは彼氏と言
っ
たはずだ。
おかしい。おかしい。わたしの記憶が間違
っ
ている?
もう一度、ブログのト
ッ
プペー
ジに飛んだ。だけど、その瞬間、カテゴリ別にエントリ数が変わ
っ
た気がした。さ
っ
きよりもひとつ増えたような。
わたしはそのカテゴリのリンクを押す。一覧を上から眺めてい
っ
て、そう、見つけた。また書いた覚えのないエントリがあ
っ
た。
タイトルは『さみしい』というもの。
中を読んで、わたしは部屋を出た。リビングに向かい、こたつに入
っ
てテレビを見ていたお姉ち
ゃ
んの肩を掴む。お姉ち
ゃ
んが持
っ
ていたケー
タイがこたつ布団の上に落ちた。わたしは善意からだけではなく、拾おうとする。
「さわらないで」
お姉ち
ゃ
んが静かに言
っ
た。
「なんで?」
わたしは構わずケー
タイを拾いあげた。そして画面を確認する。や
っ
ぱり
……
、そこにはわたしのブログの管理画面が映
っ
ていた。
「なんで?」
わたしは同じ言葉を繰り返した。言葉は同じでも意味は違う。それを示すようにお姉ち
ゃ
んにケー
タイを突き出していた。
「パスワー
ドを好きなアイドルとかにしてち
ゃ
ダメだよ」
「そうじ
ゃ
なくて!」
たしかにパスワー
ドは部屋にポスター
をは
っ
てあるあの人のプロフ
ィ
ー
ルだ
っ
た。それはセキ
ュ
リテ
ィ
上わるいかもしれないけど、だから
っ
てそれを知
っ
てて勝手にブログを書き換えていいわけじ
ゃ
ない。
「なんで勝手にブログ変えち
ゃ
っ
たの?」
「さあ?」
お姉ち
ゃ
んがほんとうにわからないという表情を浮かべる。いつも冷静で聡明なお姉ち
ゃ
んが、冷たいままこわれてしま
っ
たみたい。
「もう絶対やらないでよ」
「うん、ごめんね」
「あやまるならするな!」
わたしは怒りがおさまらず、部屋に戻
っ
た。ブログのパスワー
ドを変える。ああ、全部確認してなおさなき
ゃ
なー
。めんどくさくな
っ
て、とりあえずツイ
ッ
ター
を開いた。なんか怒りをツイー
トしないと気が済まない。だけど、そこではもう会話が進んでいた。
わたしじ
ゃ
ないわたしが友達と
……
。
『お姉ち
ゃ
んとケンカしち
ゃ
っ
た。お姉ち
ゃ
ん大好きだからち
ょ
っ
と落ち込む
……
』
『元気だしてー
』
『(´・ω・`)ウン
……
』
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