てきすとぽい
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第12回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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脱出ポッドの三人
(
るぞ
)
投稿時刻 : 2013.12.14 23:40
最終更新 : 2013.12.14 23:46
字数 : 2299
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2013/12/14 23:46:26
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2013/12/14 23:44:53
-
2013/12/14 23:44:06
-
2013/12/14 23:43:24
-
2013/12/14 23:40:36
脱出ポッドの三人
るぞ
俺たち三人だけが、脱出ポ
ッ
ドから出ることが出来た。
他はそもそも乗ることさえ出来なか
っ
た。
降り立
っ
た俺達が、振り返
っ
てまず最初に見たものは、無論のこと命を助けてくれたポ
ッ
ドの姿だ
っ
た。
燃え盛り、爆発を繰り返す宇宙船から脱出してきたためだろう。
脱出ポ
ッ
ドはう
っ
すらと焦げ付いていた。頼りなく見えるが、脱出の役には足
っ
てくれた。
ポ
ッ
ドは着地時の衝撃を抑えるための、重力調整機能を搭載しており、これは着地時の衝撃を抑えるのみならず、乗員が降りる際には、スムー
ズに活動できるよう、周辺の重力を地球と同じ強さに保つ機能がある。
おかげで俺達は、安全に外に出られた。
だが、同時に絶望も外にはま
っ
ていた。
窓のないポ
ッ
ドから出た俺達が見たものは、案の定不毛の大地であ
っ
た。
生物が棲めるようには見えない。
それはそうだろう。
この辺りで、空気の層を保てるほどの大きさがある星は、MZ星の一つしかない。
MZ星はテラフ
ォ
ー
ムされているため、人間が生きていける濃度の大気があるはずだが、逆に言えばテラフ
ォ
ー
ムされたはずの土地が、こんなに不毛なわけもない。
他の星は小さすぎて、いずれも大気の層そのものがない。
「待
っ
て、あれ
……
なに?」
女が指差した方には、巨大な鉄くずの残骸とも言うべきものが聳え立
っ
ていた。
内部がむき出しにな
っ
た状態で、錆付いた巨大な鉄の塊。
俺は思い出していた。
遠い昔この近辺の宙域にあ
っ
たという、ステー
シ
ョ
ンのことだ。
確か何らかの事故で、俺達の宇宙船の様に爆発四散して、近隣の星々にパー
ツが墜落したらしい。
長い年月を感じさせるように、残骸はぼろぼろに錆付き、見る影もなか
っ
た。
「人の痕跡よ!! 人間の痕跡だわ!! 私たち助か
っ
たのよ!!」
女がふらふらと、錆付いたステー
シ
ョ
ンの残骸の方へと駆けてい
っ
た。
「おい待て
っ
」
俺の声はトランシー
バ越しで彼女に届いていたはずだが、女は振り向きもせず行
っ
てしま
っ
た。
「馬鹿女め
……
」
いや、馬鹿というよりはこの過酷な状況で、気がおかしくな
っ
てしま
っ
たのだろう。
長い間の宇宙船の楽ではない生活の後、ギリギリの状況で他の船員を押しのけて脱出ポ
ッ
ドにこぎつけ、たどり着いたのがこんな場所では、い
っ
そ彼女の様に侠気に走
っ
たほうが楽だ
っ
たのかもしれない。
どのみちあんなボロボロのステー
シ
ョ
ン跡に、まともに使える道具など残
っ
ているまいに。
「残
っ
たのは俺とお前だけか
……
」
「
…………
」
もう一人の同乗者は、しかし黙
っ
たまま、宇宙服のポケ
ッ
トに手をいれ、奇妙な柄のようなものを取り出した。
高周波ブレー
ドだ。血も流させず、何もかも焼ききる。
「だろうな」
俺は自嘲した。
それはそうだ。ポ
ッ
ドに残された物資は僅かだ。
わずかな代えの酸素パ
ッ
ク。わずかな水。
少しでも長く生き延びて、救助を待つには、とてもではないが二人分はない。
特に酸素は、一日ともたないはずだ。
うかつにポ
ッ
ドから離れた女には、もはやこれらの物資を手に入れる手段はなくな
っ
たと言える。
だが、残りはまだ二人いる。ならば、生きるためにすることなど、一つしかない。
中の人の姿を見た事がないため、性別も人種もわからない宇宙服の相手は、無言でこちらに切りかか
っ
てきた。
今俺が着ている宇宙服であろうと難なく切り裂けるだろう、高周波ブレー
ドだが、俺も無抵抗なわけがない。
ポ
ッ
ドに密かに持ち込んでいた、携帯用火炎放射器を構えて相手に向け、トリガー
を引いた。酸素と可燃物質の両方をまくため、宇宙でも使える代物だ
っ
た。
殺人だ、と迷
っ
ている暇はない。生きるか死かだ。
高周波ブレー
ドに火炎放射器の燃料をぶちまければ、地球では大爆発が起こ
っ
てどちらも死ぬだろう。
だが、ここは大気のない真空空間だ。リー
チではこちらに分がある。
俺は生き残るのだ。絶対に。
-----------------------------------------
「本当に奇跡だわ」
私は、宇宙服を脱ぎ捨てながら、笑うしかなか
っ
た。
錆付いた宇宙ステー
シ
ョ
ンの残骸の下で、笑
っ
ていた。
何か残
っ
ているものがないか見回してみたが、さすがに何も残
っ
てはいない様子だ
っ
た。
ま
ぁ
、仕方あるまい。ステー
シ
ョ
ンの錆を近くでし
っ
かりと確認できたのだから、それで十分だ
っ
た。
そう、長い年月を物語るように、ボロボロに錆付いていた。
この辺りの星は小さすぎて大気自体がないか、あるいはMZ星というテラフ
ォ
ー
ムされた土地か、どちらかしかあり得ない。
物がこんなに錆びているのなら、それはつまり物を腐食させるだけの大気があるということだ。
MZ星の酸素に他ならない。
辺りは不毛の土地だが、単純にこの辺りが、砂漠気候だ
っ
ただけということだろう。
テラフ
ォ
ー
ムしても土が悪か
っ
たりすると、どうしても砂漠地帯は出来る。
そういう意味では、大当たりの落下地点とは言いがたいが、しかし砂漠地帯は層広くなか
っ
たと記憶している。
おそらく歩いていける範囲内に、人の住む土地があるだろう。
「まさか、沢山の星の中から、MZ星に落ちるなんて、神様の思し召しは、本当にあ
っ
たのね」
私は、そういえば同乗者の二人を置いてきてしま
っ
たことを思い出した。
ポ
ッ
ドの中ですごした時は、とてもギスギスしていた。
怖い人達だ
っ
たけれど、それは生きるか死ぬかの状況で気が立
っ
ていたからだろう。
二人が来ないのであれば、しばらくしてから迎えに行
っ
てもいいかもしれない、と思
っ
たが、とまれしばらくは、久々の空気を体中の肌で味わ
っ
ていたか
っ
た。
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