4 / 5
「無茶言わないでよ!」
私の言葉に、だがアンジーは一切たじろがなかった。
「じゃ、お前、警察に通報すんの?」
私は何も関係ないのに。どうしてアンジーの方が偉そうなんだろう。
アンジーはいつもいつもそうだ。
いつもみんなの輪の中心にいて、快活で、豪快で、偉そうで。寄ってくる女は絶えない。けど、私のことは『相棒だ』と言って何かとそばに置いてくれた。俺ら男友だちみたいなものだし、なんて言われて、そうそう、と私も頷いた。でもきっとアンジーは気づいている、私がそうは思っていないこと。だから私の話なんていつもろくに聞いてくれない。それでも私を邪見にしないのは、きっと都合がいいからだ。いると便利だから。使いっぱしりにもできる。ちょっとお金を借りることもできる。
殺人のあと処理を頼むことも。
「頼むよ。頼れんの、お前しかいないし」
偉そうと思ったら、今度は情けない声を出す。
「協力してくれんなら、俺」
本能的に悟った。この続きは聞いちゃいけない。聞いちゃいけないと思うのに。
「お前と付き合ってもいいよ」
まさかアンジーも、私がこんな行動を取るなんて思ってもみなかったに違いない。
全力で正面からタックルした。
うぐっと変な声を上げて、アンジーは近くの本棚にぶつかって、そのままずるずると床に座り込んだ。いってぇ、と顔を歪める。
「ふざけんなふざけんなふざけんな!」
私の想いをなんだと思ってるんだ。チクショウチクショウチクショウ!
「なめんじゃねぇ!」
私が地団太を踏んだそのときだった。
本棚の上に置いてあった何かの箱が、アンジーの頭目がけて落ちてきた。